幸町IVFクリニック

培養室

生殖医療で「安心」を意識したこと、ありますか?

当院では、患者さんの妊娠がゴールとは考えていません。安全に出産でき、さらにその赤ちゃんが大人になってから生殖医療による影響が指摘されるようなことが起きないようにしたいと考えています。
そのために必要なものを長年にわたり取捨選択して当院独自の培養プロトコールで体外受精を行っています。体外受精は妊娠率や生産率を意識するのはもちろん大切ですが、その先の安心も伴ってこその治療です。
当院の培養室では、患者さん自身が意識しなくても医学的な安全性に配慮した体外受精を遂行しています。

    1.清浄度の高い培養環境と最新の機器・設備

    培養室 培養室は、高性能な電気集塵機および高精度ヘパフィルターを設置し、培養室スタッフ以外の入室を極力制限しているため、非常に高い清浄度に保たれています。
    さらに厳密な温湿度管理やLED照明による照度管理、揮発性物質を使用しない培養室設計など、出来る限り胚へのストレスを抑えた環境で体外受精を行っています。
    また、紡錘体可視化装置やタイムラプスモニタリングシステムといった特殊な機器を用いて、精度の高い体外受精を実施しています。

    2.体外受精か?顕微授精か?

    体外受精(Conventional IVF;以下c-IVF)は精子と卵子を同じ培養皿に入れて精子が自力で受精する方法、顕微授精(IntraCytoplasmic sperm Injection;以下ICSI)は自力での受精が難しい場合に精子を1個捕まえて、卵子の中に直接注入する方法です。

    体外受精-胚移植法はもともと女性側の不妊要素によって妊娠できないカップルをサポートするために開発が進んだ治療法ですが、精子が少ない、受精する能力が低いといった男性側の不妊要素によって妊娠できないカップルには対応できませんでした。そこへICSIが登場して、精子の受精する能力が低い場合でも受精卵が得られるようになり、赤ちゃんが望めるようになりました。ICSIが生殖医療にもたらした恩恵は絶大で、当時は大きなブレイクスルーでした。
    体外受精か?顕微授精か?
    一方で、ICSIというのは、もともと遺伝子改変動物(平たく言うと、クローン動物やノックアウト動物など)を作出するために開発された技術をヒトの生殖医療にも応用した技術です。c-IVFは、自然妊娠でお腹の中で起きる受精の現象を体外の培養皿の中で再現している方法ですが、ICSIは前述の通り顕微操作によって精子を卵子に注入して受精を促します。どちらも同じように受精が成立したように見えますが、授精の操作後から受精が成立するまでの間に細胞内で起きるイベントには違いがあることは既に指摘されています。この違いが今後の赤ちゃんの人生にどこまで影響を及ぼすことになるのかは未知数で、ICSIが始まった1992年以降から現在でも明確な答えは得られていません。
    これらを踏まえて、当院ではできるだけICSIを用いなくても正しく受精卵が得られるように、そしてICSIが必要な卵にはより精密に施行するために、積極的に特殊な器具や機器を活用した独自の培養技術を確立しています。

    自力で受精する能力のあるご夫婦にステップアップと称して積極的にICSIを勧めることは、患者さんにとっても人類全体にとっても過剰医療です。また自然周期主義で、卵巣刺激はできるだけ自然に、薬は使用したくない、という方針で体外受精-胚移植法に臨んだのに、卵が1個しか採れないと受精が心配だからと全く抵抗なくICSIを要望される患者さんもいます。本当に希望しているのはご自身にとっての自然なのか、赤ちゃんにとっての自然なのか、卵巣刺激法と同じくらい授精法についてもご夫婦でよく検討して頂きたいと考えています。
    当院ではICSIの乱用を避けるため、患者さんの不安を技術力でサポートしています。

    3.精度の高い培養環境

    精度の高い培養環境
    ※提供:Vitrolife社

    当院では、授精後の卵はタイムラプスモニタリングという、コマ送り動画のように記録する観察法を搭載した専用のインキュベーター(培養器)で培養しています。
    胚をインキュベーターから出すことなく、かつ胚のダイナミックな動態を動画で観察できるため、培養中の負荷は最小限のままで、より詳細に胚の情報が得られるようになりました。

    当院ではVitrolife社のEmbryoScope +®という受精卵を安全に観察するために開発されたタイムラプスインキュベーターを採用しています。このインキュベーターは厳密な培養環境と撮影によるヒト胚への影響に配慮した最適な条件が設定された非常に高性能なインキュベーターです。また人工知能によって開発された受精卵の解析支援ソフトを併用し、妊娠率向上につなげています。

    4.胚培養士について

    胚培養士について 培養室が受け持つ仕事は、非常に繊細な技術と十分な経験が必要です。当院では十分な実績と技術を持った技師が、責任を持って体外受精を遂行しています。
    技術水準は、実験動物を用いて受精率90%以上、胚盤胞形成率80%以上の成績を常に維持できること、周辺機器や設備類の管理・メンテナンスができることが培養室スタッフに要求される最低条件です。十分な技術修得ができていないスタッフは、患者様の精子や卵子に一切触れることができません。
    もちろん技術のみならず、生殖医学の基礎や臨床知識などをしっかり身に付けることが必須です。生殖医学の分野は日々新しい知見が得られる分野でもあり、自身で意識して勉強しないとすぐに置いて行かれてしまいます。一人でも多く方の妊娠に貢献できるように、常に最新の技術や知見を広げる努力をしています。

    また、職務経験10年以上の胚培養士が常に培養室内に在室し、すべての行程を管理・監督しています。胚培養士は技術職である以上に経験職でもある一方、実際の現場では若い年齢層が多くを占める(20代が約7割、30代が約2割)のが実情です。職歴が長いベテランの技師を、複数配置している施設は国内でも多くありません。

    当院では、体外受精のセミナーの質疑応答や、体外受精の結果の説明などは培養室スタッフが担当しています。体外受精は、患者様の見えないところで行っている作業が多く、ご夫婦の大切な卵や精子を安心して預けて頂くためには、人柄が見える上で信頼して頂くことが大切だと考えているからです。
    同時に培養室スタッフも、十分な説明ができるように日々勉強する意欲がわきますし、お預かりしている精子や卵子も細胞ではなく、ご夫婦の小さな赤ちゃんであることを強く実感することができています。
    胚培養士に最も必要なのは、高い技術性はもちろんですが、次世代への影響に直接関わる医療従事者として、高い倫理性と強い責任感を持つことです。患者さんが一生懸命、治療に取り組む姿勢を身近に感じ、私たち胚培養士は何をするべきか、何ができるかをいつも考え、向上することが大切だと考えています。

    培養室の安全性

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