幸町IVFクリニック

コラム

「ミトコンドリア」が妊活のキーワードです

2016.10.04

 いよいよ10月が始まりました。さわやかな快晴の日が増え、気力とともに食欲も増してなんでもおいしく感じる季節です。スポーツのベストシーズンでもあります。食べたいものを心おきなく食べるためにも、積極的に体を動かしたいもの。そして、それは若々しさを保つことにもつながります。

 

当院では、抗加齢対策としてミトコンドリアに注目しています。みなさんは、「ミトコンドリア」という言葉を聞いたことがありますか? 

ミトコンドリアとは、酸素を必要とするすべての生物の細胞にある小器官で、わかりやすく言えば細胞の機能を支えるエネルギー工場です。私たちが生きていくうえでなくてはならないエネルギー(ATP)を、この小さな器官がつくりだしています。体を動かす、呼吸する、食べる、考える、細菌やウィルスと戦うなど、すべての生命活動はエネルギーなしでは成り立ちません。

ATPはどのエネルギーにもなるスグレモノですが、わずか1分ほどで消費されてしまい、蓄えておくことができません。ですから、常にミトコンドリアがATPをつくりつづける環境を整えていないと、私たちは生きていけないのです。

 

ミトコンドリアの機能が衰え、充分なエネルギーをつくれなくなると、細胞の機能は低下します。それが老化です。老化は細胞単位で始まります。細胞の小さな機能低下は、20代を過ぎた頃から始まるといわれています。

 

ということは、細胞のひとつである卵子も老化が始まっているということ。加齢とともに妊娠率が低下する理由のひとつは、卵子の老化だということはご存知ですね。卵子は、ほかの細胞に比べて遥かに大きな細胞質をもつ細胞なので、エネルギー不足は大問題! エネルギー工場であるミトコンドリアが元気でないと大変なことになります。卵子には、10~20万ほどのミトコンドリアがあります。ミトコンドリアは、卵子の成熟や受精、着床になくてはならないものなのです。

 

また、ミトコンドリアは、活性酸素の大量発生によるダメージでも機能が低下します。それに伴い、卵子や精子の質もダウン。妊娠しづらい体になってしまいます。

活性酸素はATPの産生過程で同時に作り出されますが、通常はミトコンドリアの中で処理され、外に漏れ出て悪さをすることはありません。しかし、暴飲暴食や過度な運動など、大量のATPを必要とするような状況では、ミトコンドリアの仕事量が極端に増え、内部で処理しきれなくなった活性酸素が漏れ出てしまいます。このような活性酸素が細胞のあちこちで小さな炎症を誘起し、細胞の機能低下、ひいては全身の老化を促進することにつながります。

 

ですから、卵子の質を改善するための妊活キーワードは「ミトコンドリアを守る」ことと、「ミトコンドリアを増やす」ことです。

 

 スポーツの秋ということもあり、今回は「ミトコンドリアを増やす」方法について触れたいと思います。

 

逆に言えば、エネルギーをもっとつくらないと!となれば、ミトコンドリアはどんどん増えます。ミトコンドリアはすべての細胞内に存在しますが、エネルギーをたくさん必要とする場所、筋肉や神経細胞にいっぱいあります。ですから、運動をして筋肉を増やし、脳を活性化すればするほどミトコンドリアが増加し、老化に対抗した身体がつくれられるというわけです。

 

maguro

当院では、筋肉を無理なく増やす「マグロトレーニング」をおすすめしています。これまた、耳慣れない言葉かもしれませんね。マグロトレーニングとは、その名のとおりマグロのようにゆっくりした運動を少し長めに続け、赤い筋肉をつけようというエクササイズです。

 

人間の骨格筋には、赤い筋肉と白い筋肉があります。赤い筋肉は、持久力が強く遅筋とも呼ばれます。ミトコンドリアは、この赤い筋肉に多く存在します。そこで、回遊魚であるマグロのように持久力のある赤い筋肉を増やし、ミトコンドリアを増やすのです。ウォーキングやストレッチ、ヨガや太極拳など最大心拍数の60%くらいになる運動を続けてみましょう。約30分ほどで、汗ばんできて体温が上昇します。ポイントは、体がじんわりと暖かくなるぐらい、会話ができる程度ののんびり運動を、少し長めに行うこと。このとき、体は有酸素運動の状態に入り、脂肪を燃焼してミトコンドリアをつくり始めます。

例えば、バイク運動を毎日2時間つづければ、ミトコンドリアは一週間で1.3倍、1カ月で2倍にまでなるとも言われています。運動して体を動かせば、心地よく気分転換もできて一石二鳥。ハードになりすぎると逆効果なので注意しましょう。

 

気候のいい10月は、運動を始める絶好のシーズンです。この機会に、無理のない運動をスタートし、楽しみながらミトコンドリアを増やしてみませんか?

気軽にウォーキングからでもOK。色づき始めた街路樹や街並みを眺めながら、お散歩感覚で出かけてみてはいかがでしょう。美しい秋空のしたで、自然の中を歩き、ゆっくり深呼吸。適度に体を動かせば、循環がよくなり、心も軽くなります。新しいミトコンドリアが増え、エネルギーが満ちれば、元気で質のいい卵子がつくられるようになります。つまりミトコンドリアを増やすことは、妊娠しやすい体に近づくことにもなるのです。

 

まずは、トライすることが大事です。少しずつ生活の中に運動を取り入れて、元気なミトコンドリアを増やしていきましょう!

 

 

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