幸町IVFクリニック

卵子の老化に負けないために

    抗加齢医学的治療

    ART妊娠率・生産率・流産率

    のグラフは年齢別の体外受精の妊娠率・生産率です。
    30代後半から妊娠率の低下が始まり、40代はかなり妊娠しづらい状況だということが判ります。
    妊娠にとって最大の敵は年齢、つまり「老化」です。

    抗加齢医学的治療

    (日本産科婦人科学会登録・調査小委員会ホームページより引用)

    老化のキーワードはミトコンドリア

    老化は、細胞単位で始まります。細胞にはミトコンドリアという小器官があり、これがエネルギー工場として働いていて、細胞の機能を支えています。
    このミトコンドリアの機能が徐々に衰えて、十分なエネルギーを作れない状態になると、細胞は機能低下に陥ります。この小さな変化が徐々に広がり、やがて自覚するくらい全身の機能低下を感じる頃が、老化を自覚する中高年世代ということになります。
    しかし実際には、細胞の小さな機能低下は20代を過ぎた頃から既に進行しているのです。

    卵子のエネルギーもミトコンドリアが支えています

    妊娠率のグラフの通り、年齢に伴って妊娠率が低下する理由。
    それは卵子の「老化」であることが指摘されています。卵子の場合、ミトコンドリアの機能低下だけでなく、物質代謝能の低下や染色体の端部(テロメア)の短縮など、加齢に伴う変化についての研究が報告されつつありますが、まだ完全には解明されていません。
    ただ、卵子も端的に言えば細胞の一種。
    しかも他の細胞に比べると遙かに大きな細胞質を抱えた細胞ですから、エネルギー不足が最も深刻でかつ最初に改善するべき課題だと考えられます。

    ミトコンドリアを守るには

    ミトコンドリアを守るには ミトコンドリアの機能低下を防ぐ方法、つまり老化を防ぐ方法はありません。
    しかし、老化の進行度を遅らせる方法はあります。ミトコンドリアの機能低下は活性酸素のダメージによるものが大きいと考えられており、活性酸素が過度に発生した状態が続くとミトコンドリアが傷つき弱ってしまいます。
    逆に考えると、ミトコンドリアを守るためには、過度な活性酸素が発生する状態を避けること、発生した活性酸素が速やかに除去されること、つまり「抗酸化」が重要だとわかります。そしてさらにもう一歩踏み込んで、質の良いミトコンドリアの数を増やすことによって、細胞のエネルギーが十分に作られている状態を保つこと、これが老化に対抗する手段です。

    身体の老化の進行度は、その方の生活習慣によって大きく異なります。過度な活性酸素が発生する生活習慣を送っている方はミトコンドリアの機能低下のために老化のスピードが速くなり、そうでない方は老化が遅い傾向があります。同い年でもすごく若く見える方、すごく老けて見える方がいるのは、このためです。また、その方の元々の体質によっても異なります。全身の機能低下が起きると、体外受精の様々な薬を使用しても、身体の応答性が悪いために、理想的な効果が出ずに卵子や子宮内膜の質が悪くなり妊娠に至らない、という悪循環がおこります。これも年齢に伴う妊娠率の低下の理由です。

    卵子の老化に負けないために

    卵子は、生まれたときから身体の中にいる細胞の一つです。
    身体の老化と同じく、加齢による機能低下が認められていますから、身体の老化が早い方は、当然卵子の老化も早いと考えられます。 卵子の抗老化に直接効果的な物質というのは明らかになっていませんが、血流によって代謝維持されている以上、全身に対する抗酸化療法が、卵子への抗酸化、機能向上につながる可能性があります。

    抗酸化療法のみで十分な効果が得られない状態であれば、さらに医学的な手法で老化に対抗するためのホルモンの補充療法などを検討します。

    まずは、ご自分の現時点での状況を把握すること。どのくらい老化傾向が認められるのかを把握し、その上で必要な治療を併用することで全身の老化を改善しながら体外受精で妊娠を狙う。妊娠にとっての最大の敵が「老化」である以上、これが最も効果的であると考えます。

    年齢が30代後半以上の方、またそれ以下の方でも、明らかな不妊要素がないにもかかわらず卵の質が悪い、なかなか妊娠しないといった方の場合は、身体の改善を検討することが大切です。体外受精は魔法の技術ではなく、妊娠を助ける技術というだけで、妊娠はご自分の妊娠力で妊娠するのです。身体の機能低下を認めるのであればこれを改善すること、これが地道でも最も有効な妊娠への近道です。

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