体外受精というと、どう判断していいか判らないという声をよく聞きます。
「よく判らないこと」は、専門家にご相談下さい。
体外受精に踏み切るべきかどうか悩んでいる方へ
体外受精というと急にハードルが高くなったように感じて、すぐに踏み切る気にもなれないし、どこに相談していいのか判らなくて、自分にとって本当はどの程度必要性が高いのか判らない、といった声をよく聞きます。
当院でも、受診前はどこへ相談していいのか判らなくて、やっと体外受精をする気になったので受診しました。という患者さんの声もちらほら聞こえます。
実際には、当院を受診された全員が、必ず体外受精を行っている、というわけではなく、状況を確認した上で体外受精の必要性が低い方は、一般不妊治療やその期間など、今後の治療方針の相談だけで帰られる方もいらっしゃいます。必要な方には積極的な治療を、必要のない方には不要な過剰医療をしないように、というのが当院の基本的な考え方です。
当院は体外受精の専門クリニックです。相談だって立派な治療の一つです。専門的な見解が必要な方は、治療をする、しないに関わらず、受診して頂いてもおかしくありません。
具体的には下記のような方の場合に、体外受精をお勧めしています。
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卵管が詰まっていると指摘されたことがある。
→卵管因子 -
子宮内膜症を指摘されたことがある。
→子宮内膜症は妊娠率を低下させる大きな要因です。 -
抗精子抗体が陽性と指摘された。
→抗精子抗体は女性の身体の中で精子を殺してしまう要素です。体内での自力での受精を阻害し、顕微授精の適応となります。 -
精子が少ない(乏精子症・無精子症)と指摘された。
→体内で自力での受精が困難です。顕微授精の適応になります。 - 40歳以上の方(後述参照)
- 年齢にかかわらず、これまでに卵巣機能の低下を指摘されたことがある。
- AMH(抗ミューラー管ホルモン)が低い(1.0ng/ml未満)と指摘されたことがある。
- 上記のどれにも特に当てはまらないが、とにかくできるだけ早く赤ちゃんが欲しい。
1から4については、医学的な問題です。一般不妊治療では妊娠ができない、または非常に困難な症例ですから、体外受精が治療の第一選択肢となります。
問題なのは、5から7に当てはまる、原因不明に分類される機能性不妊です。明らかに妊娠しづらい状況ですが、必ず体外受精が必要ではないために、ご自身にとってどのくらい体外受精が必要なのかが判らずに、治療の方向性を見失ってしまいがちになる状況です。
特に、加齢に伴う卵子の老化による不妊は、患者さん自身が積極的に行動しないと、誰も何も言ってくれません。一人で悩んでいるだけでは、なかなか答えが見つけにくい。そんな場合には専門クリニックを上手く利用して頂くといいと思います。
妊娠の最大の敵は「老化」です
グラフは年齢別の体外受精の妊娠率・生産率です。30代後半から妊娠率の低下が始まり、40代はかなり妊娠しづらい状況になります。
今まで、ひどい生理痛や月経不順などもなく、ご自身が妊娠しにくい身体かも?と思うことも無かったし、一昔前と違い、社会で重要な役割を担う女性も増えて、結婚や妊娠・出産、子育てというイベントをついつい先延ばしにしてしまっている方も多いのでは?
「40才までは自分たちなりに努力をして、40才になっても妊娠しなかったら体外受精を考える」という話をよく聞きますが、上のグラフを見ていただくと実は危ない考え方であることがわかります。もちろん40代になってから体外受精を始めてもスムーズに妊娠される方もいますが、途中で苦戦を強いられる方も多く、最終的に諦めることになる方もいます。こういった方々の中には、あと2年早く治療を始めていれば、どうにかなったのでは・・・と推測される症例がかなりあります。
グラフを見ると、37-38歳頃まではどの項目もほぼ横バイで推移して、変化も緩やかですが、それ以降になると妊娠率や生産率は急激に低下し、逆に流産率は上昇しています。
ご夫婦のライフプランを検討する際には、ご自身が妊娠を計画する時の年齢、それに伴う妊娠率や流産率もしっかり考慮することが大切です。
医学的には、現在40才未満の方は、体外受精を含めた治療で40才までには妊娠するというつもりで、現在すでに40代の方は、できるだけ早く高次治療へのステップアップを検討することをお勧めします。当院としては、40代の方の場合、本気で赤ちゃんが欲しいと思うならできるだけ早く体外受精を検討することを勧めています。また、身体や卵子の老化を少しでも食い止めるために抗加齢医学的治療が有効なことがありますので検討してみてください。