凍結-融解胚移植法
一般的には採卵周期で胚移植するよりも、凍結胚移植の方が高い妊娠率が得られています。
凍結可能な胚は、妊娠の可能性が期待でき、かつ凍結・融解のストレスにも十分耐えられると判断された胚に限られるため、比較的、質の良い胚を胚移植することができるからとする見解や、採卵周期はご自身の身体が通常よりも高ホルモン状態なのに比べると、凍結胚移植周期は、より通常のホルモン状態で、さらにしっかりした子宮内膜を作ることができることなどが、妊娠率が高い理由ではないかと考えられています。
凍結保存した胚を胚移植するには、胚の日齢と子宮内膜の日齢をぴったり合わせる必要があります。日齢の合わせ方には、ホルモン補充周期と排卵周期の2通りの方法があり、どちらも妊娠率に差はありません。
ホルモン補充周期
排卵を起こさずに子宮内膜のみをエストロゲン製剤で厚くして胚移植を行います。この方法の長所は、先に胚移植日を決定して、そこから逆算して薬剤を投与しますので、胚移植の予定を2-3週間前に決められ、その間の通院回数も1-2回と少なくて済みます。また、日程調節が厳密なため、排卵周期よりも子宮内膜と胚の日齢のずれが小さいことが特徴です。短所としては、排卵が起きていないので黄体が形成されず、妊娠維持に必要なエストロゲンやプロゲステロンが妊娠初期は自力ではほとんど分泌されません。 そのため、妊娠成立後も妊娠8-10週頃まで黄体補充療法が必要になります。
排卵周期
排卵日から数えて胚移植日を決定します。原則として自然の排卵を待ちますが、自力での排卵が難しいなど、一部の方では排卵誘発が必要になります。この方法の長所は、排卵が起こることで卵巣に黄体が形成され、妊娠維持に必要なエストロゲンやプロゲステロンが自力で分泌されるため、ホルモン補充周期よりは黄体補充療法を比較的短期間で終了することができます。 短所としては、排卵日が基準となるため、排卵日を特定するための通院回数が多くなる可能性があること、 排卵日がいつになるかわからないため胚移植の予定が直前まで決められないことが挙げられます。
※当院は、ホルモン補充周期で凍結融解胚移植を実施しています。
凍結胚の融解と胚移植
ホルモン補充周期または排卵周期どちらかの方法で、胚と子宮内膜の日齢を一致させて胚移植日を設定します。胚の融解は、胚の状況により胚移植の前日または当日に行います。当院で採用しているvitrification法を用いた胚の凍結-融解は、技術的な安定性が高いため、 凍結―融解の操作にて胚が損壊する率は低く(2%以下、ただしゼロではありません)、胚移植後の妊娠率も良好です。