妊娠のためには鉄って大事です。
こんにちは 幸町IVFクリニック 培養室の雀部です。
なんだかすっかり真夏、っていう気温で、毎年こんなに暑かったかなぁ?なんて思ったら、二十四節気では、昨日7日は小暑。つまり本日から暑い日!ってことらしい。
暑中見舞いも、この日から。というわけで、文句言えないのかー・・・。
でも、暑いモンは暑いよーーヽ(#`Д´)ノ!!
はぁ。・・・培養室に入る前にイライラも飛ばさないとね。
不妊治療中でホルモン剤を使っている場合、薬によっては血液がドロドロになりやすいものもあるので、普段以上に水分摂取を心がけましょう。一気にグビグビ飲むのじゃなく、少量でもちょこちょこ補給する方が良いですよ。血液サラサラがポイントですよ。
さて。
先述の通り、私は検査技師でもあるので、培養室も検査も管理しています。
当院では患者さんの術前検査の結果は、検査の専任者が最初に一次スクリーニングを行って、次に私のところで初診時の問診とか持参資料から、臨床情報に照らし合わせて二次スクリーニングを行って、最終的に医師が総合的に診断しています。
なので、患者さん全員のデータを、私が一度は見ることになります。
これがワリと大変ですが、患者さんの基礎データを把握できるので、卵の所見や体外受精の結果を診察室へフィードバックする際に、臨床データに結びついた情報として返すことができて、診療上、結構便利です。
で、患者さんのデータでやたら目にとまるのは、貧血!!
いわゆる鉄欠乏性貧血です。
ウチは体外受精しかやってないので、世間一般の人たちと比べるとデータの偏りがあるとは思いますが、それにしても、とにかく多い!!基準値で比較すると、約7割くらい。妊娠前の理想値を基準にすると、ほぼ9割以上は鉄の補給が望ましいくらい。
以前、「ためして○ッテン」でもやってたので、多分、不妊治療をしている患者さんだけに限らず、世の中の人が全体的に貧血傾向なんでしょう。
貧血なんて、ちょっとクラクラするだけでしょ?なんて、思っていませんか?
鉄っていうのは、血液の赤い色素、身体中に酸素を運ぶものっていうイメージが強いかもしれませんが、実際にはもっとたくさんの大事な役割を持っています。
生物が生きていく上ではとても重要な微量元素で、酸化還元反応を触媒する酵素の活性中心として働いています。
つまり、細胞が行う化学反応の中で、酸素を取ったりつけたりして起こる(正確には電子の受け渡しだけど)化学反応を起こす酵素の、最も大事なパーツです。
赤血球だけではなく、全身の細胞が生きていくために必要とする微量元素です。
鉄が不足すると、だるい、目眩がする、疲れやすいといった症状が紹介されていて、それは全身の酸素が不足気味だから、と説明されてますが、実際にはそれだけではなく、全身の細胞の生命活動が低下している状態になってるということですね。。
また鉄は、セロトニンとか、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質を作る際にも必要になることが判っています。セロトニンは精神を安定させたり、リラックスさせたりするホルモン、ノルアドレナリンは交感神経系に作用して、やる気や集中力を向上させたり、ストレスを受けたときの状態を学習して順応させるホルモンです。鉄が足りなくなると、これらのホルモンも減ってしまい、イライラして怒りっぽくなったり、逆に気分が落ち込んで抑うつ状態や無気力になったりということが起こりやすくなります。
抑鬱状態が強くて、抗うつ剤の適応になるような人でも、重度の貧血がある場合、抗うつ剤よりも鉄の補給で症状が改善する場合もあることが報告されています。
鉄って思ってたより大事な成分なんだ~って、思いませんでしたか?
鉄を摂取しただけで、卵の質が劇的に改善するとはなかなか言い難いですが、少なくとも全身のパフォーマンスを上げる、身体の細胞の働きを良くするという意味では、十分な量が身体にあることは必須要件です。
年に一度の健康診断で、ヘモグロビン量(Hb)が低いって引っかかる人は、既に明らかな貧血なので、これを放っておくのは論外。ちゃんと病院に行って鉄剤を処方してもらうか、最低限、鉄のサプリを摂取しましょう。
問題なのは、いわゆる「隠れ貧血」。
健康診断でも異常値までには至らないので、特に指摘はされないものの、実際には下限値ギリギリで、血球成分を詳しく見ると身体の中は鉄貧乏になっている状態です。昔ながらの健康診断って、Hbしかみてない場合も多くて、病的な状態までHbが低くならなければ貧血を指摘しないんですよね。そうなる前に、自分で気がついて身体のメンテナンスをすることが大切ですよ。
次回はこの「隠れ貧血」と摂取の注意点についてのお話です。
ではでは。