プロゲステロン併用の卵巣刺激法
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
今回は、卵巣刺激法の話です。
近年、プロゲステロンを併用した卵巣刺激法が広く普及しています。英語では、progestin prime ovarian stimulation (PPOS)と呼ばれています。
「卵巣刺激中になぜプロゲステロン?」と違和感を感じた方は、よく性周期を理解されています。そうです。一般に卵胞が育つのは性周期の低温相の時期なので、プロゲステロンは分泌されていません。排卵後、高温相の時期は、プロゲステロンが分泌されています。そのプロゲステロンを、なぜあえて卵巣刺激中に投与するのか?
実は、近年の研究で、プロゲステロンには排卵を抑制する作用があることがわかってきました。そして、プロゲステロンを併用して卵巣刺激を行うことにより、卵胞が成熟する前の早発排卵を防ぐことができるのです。
この方法を実際にやってみると、思ったより便利なやり方です。アンタゴニスト法に比べてコストが安くて済む、診察の回数を減らせるなど、患者さんにとってもメリットがあります。ただし欠点は、低温相にプロゲステロンを投与するので内膜の日齢がずれるため、全胚凍結になることです。
あと気になるのが、自然では分泌されていない時期にプロゲステロンを投与するため、胎児や新生児に影響を及ぼさないかということです。その部分について検証した論文を紹介します。
目的:新生児の結果についてPPOSと他のプロトコールを比較検討すること
研究デザイン:メタ解析
主要評価項目:新生児の先天奇形のリスク
対象:4つの研究において対象となった計9274人の新生児
結論:他のプロトコールと比較して、PPOSと先天性奇形のリスクの関連性は、同等であった。
(詳細は、原文を参照してください)
新生児に対する影響は無いようです。安心してこの方法を使えます。