幸町IVFクリニック

院長

妊娠しやすい季節

2020.08.20

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回の話題は、妊娠と季節の話です。

一般にマウスは春と秋が妊孕性(妊娠する能力)が高いといわれています。大学院生の頃、実験でマウスの体外受精をたくさんやりましたが、春と秋はたくさん卵が取れ妊娠もしやく、データを出しやすかったのですが、夏と冬は逆に成績が悪く苦労したことを思い出します。

一方、ヒトの妊孕性には季節性がないと一般には考えられていますが、実際にはどうなのでしょうか?ヒトの妊孕性と季節の関連について研究した論文が、今年3月と8月に発表されていましたので紹介します。

Wesselink, A. K., et al. (2020). “Seasonal patterns in fecundability in North America and Denmark: a preconception cohort study.” Hum Reprod.

一本目の論文は、北アメリカとデンマークにおける自然妊娠のデータを解析しています。結論は、「秋は妊孕性が高く、春は妊孕性が低い。特に、緯度が低い地域ではその傾向が強い」でした。自然妊娠は、地域、文化、環境の影響を受けている可能性が考えられます。

では、体外受精の成績はどうなのでしょうか?

Farland, L. V., et al. (2020). “Seasonal variation, temperature, day length, and IVF outcomes from fresh cycles.” J Assist Reprod Genet.

二本目の論文は、体外受精の成績の季節性について検討しています。結論は、「採卵を行う季節は、生産率に影響しない」でした。しかし、「6ー7月に行った採卵は、やや臨床妊娠率のオッズが高い傾向にあった。また、採卵時の気温が高い方が、臨床妊娠率のオッズが高い傾向にあったが、その傾向は生産率には認めなかった。」と付け加えられています。

体外受精の成績は、ほとんど季節の影響は受けないようです。強いていえば、暖かい時期の方が、やや妊娠しやすいようですが、生産率に影響を与えるほどのものではないということでした。

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