内膜は薄くなることが重要
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
今回は、凍結胚移植周期の内膜の話です。
凍結胚移植周期は、胚はすでに凍結されていて変えることができませんので、どうしても内膜が気になると思います。これまでも、「内膜が○mm以上であることが重要」とか、「いえいえ内膜のパターンが重要」などという議論が延々と繰り返されてきました。
ホルモン補充周期では、エストラーナを一定期間使用し、プロゲステロン腟座薬が始まる前に診察を行い内膜の厚み等を確認します。その際に、内膜厚がギリギリOKの方から「胚移植までに厚くなりますか?」と質問されることがあります。私が「この後は逆に内膜は薄くなりますよ」と答えると大抵「えっ!」という反応が返ってきます。
実は、内膜の厚みのピークは、プロゲステロン腟座薬が始まる直前の時期で、プロゲステロン腟座薬が始まると逆に内膜厚は薄くなります。今回紹介する論文では、この現象を内膜のcompactionと呼んでいます。Compaction とは、圧縮、緊密化などという意味です。
私は、この内膜のcompactionという現象は経験的に知っていましたが、それが妊娠率と関係していることには考えが及びませんでした。
目的:凍結胚移植周期において、プロゲステロン開始直前と胚移植日の内膜の厚みの変化が、妊娠率に影響を及ぼしているかどうかを検証すること
研究デザイン:後ろ向き観察コホート研究
対象:ホルモン補充で凍結胚移植を行った274人の女性
主要評価項目:内膜の厚みの変化、継続妊娠率
結果:compactionが起きた患者さんの継続妊娠率は、起きなかった患者さんと比較して、有意に高かった。compaction率が高い(より薄くなった内膜)ほど継続妊娠率が高かった。
プロゲステロン腟座薬が始まった後のcompaction率が高い(より薄くなった)内膜ほど妊娠率が高くなるということでした。内膜が薄くなるということは、内膜がプロゲステロンによく反応しているということなのだと思います。