ご主人の年齢と胚の染色体異常
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
今回は、男性の年齢と胚の染色体異常の関係についてです。
女性の年齢が高くなるに従い、胚の染色体異常率が高くなることは、よく知られています。染色体異常のうち、倍数性異常(通常は2倍体、1倍体や3倍体など2倍体以外の倍数性のこと)、異数体(通常は各染色体は1対2本、1~数個の染色体に関して数が増減した状態)は着床不全、流産、子宮内胎児死亡の原因になります。よって、女性側の年齢が高くなると、妊娠率や生産率が低下します。
では、男性の年齢の影響はどうなのでしょうか?男性の年齢と胚の異数体率の関係を検討した研究を紹介します。
目的:若い女性から提供されたドナー卵子と精子を受精させ、胚の着床前異数体診断を行い、異数体率と男性の年齢の関係を検証すること
研究デザイン:後ろ向きコホート研究
対象:407人の男性の精子とドナー卵子を受精させて得られた3118個の胚。39歳以下203人、40-49歳161人、50歳以上43人。
結論:男性の年齢と胚の異数体率には、関連性がなかった。ただし、50歳以上の男性は、若い男性と比較して、受精率が低く、染色体の部分的な異常(染色体全体ではなく、部分的な数の異常)率が高かった
(詳細は、原文を参照してください)
ちなみに、この研究で、若い女性からのドナー卵子を用いている理由を解説しておきます。若い女性の卵子は染色体異常率が低く、卵子側の原因による胚の染色体異常率も低くなります。よって、若い女性からのドナー卵子を用いることによって、データの背景条件を揃えることができるからです。
女性側から「ずるい!」という声が聞こえてきそうですが、男性側の年齢は、胚の異数体率には影響しないようです。