幸町IVFクリニック

院長

コスパの良い不妊治療

2020.09.17

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、不妊治療とお金の話です。

医療とお金は、非常に重要な関係にあります。しかし、日本の医療業界は、長らく医療とお金の話を結びつけて話しをすることをタブー視する傾向にあります。例えば、ある疾患に対して2つの治療法があり、それらを比較検討する場合、検討項目としてコストの話が入ってきて当然だと思うのですが、日本の医師は、それを避ける傾向にあります。治療法の選択は、純粋に医学的に考察されるべきで、お金の話を絡めるのは「はしたない」という潜在的な思い込みがあるのかもしれません。話の展開によっては、いのちの値段の話に転がりやすいというのも理由としてあると思います。

しかし、国際学会に行くと、お金の話を絡めた演題が、必ず一定の割合で発表されています。「医療というのはそもそもお金がかかるものなのだから、その話を避けてどうするの?」という考え方だと思います。日本の学会では見られない光景です。

時代は大きく変わり医療費が高騰しています。少し前には高額な抗がん剤が話題になったこともあります。いい加減、我々も発想を変えてお金の話も絡めた議論をしていかないと医療費破綻へまっしぐらです。

前置きが長くなりましたが、今回は、不妊治療のコスパについて研究した論文を紹介します。オランダにて行われた研究で、今月発表されたばかりです。

van Eekelen, R., et al. (2020). “Cost-effectiveness of medically assisted reproduction or expectant management for unexplained subfertility: when to start treatment?” Hum Reprod.

目的:女性が38才未満の原因不明カップルが3年間不妊治療をする場合、待機療法(日本のタイミング法)、排卵誘発を伴った人工授精、体外受精をどのような順番で行うとコスト効率が良いのかを検討すること

結論:不妊治療の予算が3.2万ユーロ(約400万円)以下の場合は、2年間の待機療法→1年間の体外受精、3.2万ユーロ(約400万円)より多い場合は、1年間の待機療法→1年間の排卵誘発を伴った人工授精→1年間の体外受精が最もコスト効率が良かった。

(詳細は、原文を参照してください)

38才の女性が2年間待機療法または人工授精を行ってから体外受精だと、すでに40才になってしまいますので、私の感覚では遅い気がします。30代後半の女性はもう少し早めの展開が望ましいと思います。

一番のコスト節約は、可能な限り若い内に治療することです。同じ治療をやったとしても、女性の年齢が若い方が結果がでやすく、結果的にかかるコストも安くて済みます。

 

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