幸町IVFクリニック

院長

精子DNA損傷検査(DFI)

2021.04.01

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、精子の検査の話です。

精子を評価する検査として、精子の濃度や運動性を調べる一般精液検査が広く行われています。しかし、一般精液検査はいわゆる外見を指標としており、精子を評価する検査としては不十分との指摘があります。例えば、一般精液検査では問題が無いのに、実際に体外受精をやってみるとまったく受精せず、顕微授精が必要になる症例があります。外見を指標とした検査の限界です。

一般精液検査がそのような状況なので、長らく精子の質を正確に評価する検査が待ち望まれてきました。その精子の質を評価する検査が、精子DNA損傷検査(DFI)です。当院のホームページでも紹介していますので参考にして下さい。 数値化された結果がでますので、この検査を指標として男性側の治療の前後を比較し、治療効果の判定ができます。

今回紹介するのは、この精子DNA損傷検査(DFI)を5,114人の男性に行った結果を、後方視的に解析した論文です。

Zhang, F., et al. (2021). “Sperm DNA fragmentation and male fertility: a retrospective study of 5114 men attending a reproductive center.” J Assist Reprod Genet.

研究デザイン 後ろ向きの観察研究

対象 2,760人の不妊男性と2,354人の配偶者が少なくとも1回以上原因不明の流産※を経験している男性

  ※唐突に原因不明の流産が出てきましたが、精子のDNA損傷と流産の関連を指摘する論文が発表されているためです。

結果 

  配偶者が少なくとも1回以上原因不明の流産を経験している男性の精子DFI値は、不妊男性と比較して低値だった(損傷が少なかった)。

  精子の前進性とDFIは、負の相関があった(前進性が高い男性は、DNA損傷が少ない)。

  年齢とDFIは正の相関があった(高年齢ほど、DNA損傷が多い)。

結論 

  精子DFI検査は、精液の質を評価する指標として重要である。特に精子の前進性が低下している男性、高齢男性にお勧めである。

 

精子DNA損傷の主な原因は、過剰に産生された活性酸素と考えられています。DFI値が高い方は、活性酸素を発生させない努力に加えて抗酸化力を高めていく必要があります。

 

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