幸町IVFクリニック

院長

顕微授精が児に与える影響

2023.08.17

幸町IVFクリニック院長の雀部です。

医学は絶えず発展しています。生殖医学の分野でも新しい知見が続々と発表され、疾患や治療に対する考え方は常に変化しています。このブログでは、妊娠を希望されているご夫婦向けに、新しく発表された知見のポイントをQ&A形式で簡潔に紹介していきます。

今回は顕微授精の安全性の話です。

Q 顕微授精は生まれてくる子供に影響を及ぼさないのか?

A 顕微授精で生まれた子供は、体外受精で生まれた子供と比較して、わずかに先天性の大奇形が多いとの報告があります。

 

根拠となる論文は、

Henningsen, A. A., et al. (2023). “Risk of congenital malformations in live-born singletons conceived with ICSI: a Nordic study from the CoNARTaS group.” Fertil Steril.

 

論文のエビデンスレベルは、

3か国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)のデータベースを解析した大規模な研究です。エビデンスレベルは高いです。

 

顕微授精の安全性(児への影響)については、30年前からずっと議論が続いていて、未だに決着がついていない問題です。

現状では、顕微授精はおおむね安全という前提のもとに、通常の医療行為として実施されています。しかし、新しい研究によって今までの常識がひっくり返されるというのは世の常です。顕微授精の適応のあるご夫婦が、技術を利用するのは現時点では問題ありませんが、適応のない乱用は厳に慎むべきと考えます。

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