顕微授精が児に与える影響
幸町IVFクリニック院長の雀部です。
医学は絶えず発展しています。生殖医学の分野でも新しい知見が続々と発表され、疾患や治療に対する考え方は常に変化しています。このブログでは、妊娠を希望されているご夫婦向けに、新しく発表された知見のポイントをQ&A形式で簡潔に紹介していきます。
今回は顕微授精の安全性の話です。
Q 顕微授精は生まれてくる子供に影響を及ぼさないのか?
A 顕微授精で生まれた子供は、体外受精で生まれた子供と比較して、わずかに先天性の大奇形が多いとの報告があります。
根拠となる論文は、
論文のエビデンスレベルは、
3か国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)のデータベースを解析した大規模な研究です。エビデンスレベルは高いです。
顕微授精の安全性(児への影響)については、30年前からずっと議論が続いていて、未だに決着がついていない問題です。
現状では、顕微授精はおおむね安全という前提のもとに、通常の医療行為として実施されています。しかし、新しい研究によって今までの常識がひっくり返されるというのは世の常です。顕微授精の適応のあるご夫婦が、技術を利用するのは現時点では問題ありませんが、適応のない乱用は厳に慎むべきと考えます。
監修医師紹介

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊
医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。