幸町IVFクリニック

院長

体外受精は、“半分”検査、“半分”治療

2017.08.10

こんにちは 幸町IVFクリニック 院長の雀部です。

今回は前回の「原因不明なのになぜ体外受精?」の続きを書きます。前回分を一読してから読んでいただけると分かり易いかと思います。

 

そもそも検査は、2種類に分けることができます。

①現状をそのまま把握する検査

各種血液・尿検査など

対象の患者さんにある介入をして、その介入の結果をみる検査

例えば糖負荷試験の場合、糖75gを飲んでもらい、その前後の血糖値を比較するなど

 

体外受精は、後者のタイプになります。体外受精という治療(介入)を行った結果を見ていく検査なのです。体外受精を行うとその過程でたくさんのデータが集まってきます。それらを解析してその患者さんの不妊原因を探っていきます。具体的にどのようなことが分かるのでしょうか。


20170810

 妊娠は、まず精子と卵子が出会って、受精して、受精卵(胚)が発育し、子宮に着床し、着床後もさらに胚発育していきます(スライド左側)。そして、妊娠しづらいご夫婦は必ず①~⑤のどこかで引っかかります(スライド右側)。どの段階でどのように引っかかったかにより、不妊原因の見当をつけることができます。

順番に見ていきます。


①時間的・空間的に精子と卵子が出会っていない可能性
体外受精を行うと(顕微授精なしで)一発で妊娠するご夫婦は、これに該当している可能性があります。不妊原因の中では、最も頻度が高く、体外受精をやるだけで解決できます。


受精が成立していない可能性
精子または卵子に問題がある、または抗精子抗体陽性のため、受精が上手く成立しないご夫婦が該当します。なかには、精液検査ではまったくの正常所見なのに、実際に体外受精をやってみると受精しないご夫婦もいます。多くの症例が顕微授精を行うことにより解決できます。顕微授精を行っても正常受精しない場合は、精子または卵子の質を改善する対策が必要になってきます。


胚が発育していない可能性
正常受精が成立しているのに、その後の胚発育が不良なご夫婦が該当します。胚発育が停止、または大きく遅延している場合は、胚移植がキャンセルになります。原因については、卵子または精子の質まで遡って検討する必要があります。頻度的には卵子側の因子であることが多いようです。


着床が阻害されている可能性
胚移植まで到達できたのに、着床が上手くいかない症例が該当します。原因については、胚側の因子と内膜側の因子を分けて検討する必要があります。頻度的には、胚側の因子が多く、さらに辿ると卵子の質の問題に行き着くことが多いです。内膜側の因子のうち、子宮奇形、内膜ポリープ、粘膜下筋腫については、事前または治療中の超音波検査にてスクリーニング可能です。


着床後、胚が発育していない可能性
着床したのに、その後の胚発育に問題が発生する症例です。これも、胚側の因子と母体側の因子を分けて考える必要があります。母体側の因子の検索は、不育症の領域になってきます。ただし、いきなり不育検査に飛びつくのではなく、胚の質に改善の余地がないかどうかについては十分に検討する必要があります。

 


このように、体外受精を通じて、鳥の目で妊娠全体を俯瞰する視点が非常に重要です。不妊原因の当たりがついたら、そこを集中的に掘り下げていきます。枝葉の原因にとらわれて時間を無駄にしている場合ではありません。もちろん、原因と対策を考えていくのは、我々生殖医療専門医ですが、治療を受けるご夫婦もその視点を理解しておく必要があります。


専門的な内容になりましたが、皆様の妊活に少しでもお役に立てれば幸いです。

 


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