幸町IVFクリニック

院長

40代だけどAMHが高いからまだ大丈夫?

2017.08.31

こんにちは 幸町IVFクリニック 院長 雀部です。

 

診察室でよく遭遇する患者さんの疑問や誤解の第4弾です。

今回は、抗ミューラー管ホルモン(AMH)の続編です。前回分AMH=卵巣年齢って本当?」を一読してから、お読みください。

 

前回は20-30代なのにAMHが低い症例についてでしたが、今回はその逆パターンです。

40代だけどAMHが高いと言われたので、私はまだ大丈夫!」

これもよく遭遇するパターンですが、本当に大丈夫なんでしょうか?

 

この患者さんの頭の中では、AMH高値=卵巣年齢が若い=その年齢の人と同じように妊娠するはず、だから私はまだ大丈夫と考えているのではないかと思われます。その結果、延々と一般不妊治療を続けたり、体外受精を受けて卵子の質が悪いと言われて納得がいかなかったり、といったことが起きてきます。

 

前回分をお読みいただいた方は、この患者さんの「AMH高値=卵巣年齢が若い」が根拠のない思い込みであることがわかるかと思います。そうです、「AMHは量的指標なので、卵子の質まではわからない」でしたね。AMHが高い40代の方に体外受精を行うと、卵巣刺激によく反応して卵子がたくさん取れるのですが、卵子の質は年齢相当であることが多いようです。極端な症例ですと、卵子はたくさん取れてくるのに、全部質が悪く1個も妊娠に結びつきそうな受精卵が得られないこともあります。

 

年齢が若いほど卵子の質は高い傾向にあり、卵子の質が高いほど妊娠しやすい傾向にあります。妊娠しやすさの指標としては、AMHより年齢の方が優れています。よって、40代の方は、AMHが高くても低くても、すぐに体外受精を検討してください。

 

最後に、AMHの読み方を簡単に説明しておきます。

AMHの値を読む際に注意しなければいけないのが、測定誤差です。もともと、AMHは測定誤差の大きい検査です。AMHが普及し始めの頃は、臨床経過とAMH値が一致しない症例がよくありましたが、最近はかなり改善されてきました。それでも、測定誤差は、常に念頭に置いておく必要があります。例えば、AMH0.9ng/mlだった方が、少し期間をおいて測ったら、1.2ng/mlに上昇したとします。これを、AMHが高くなったと判断すべきか、測定誤差と判断すべきか、は難しいところです。臨床的にはあまり意味が無いことの方が多いと思います。AMHはざっくり読むがコツです。

 

次に、AMHには基準値や正常値がありません。AMHは、卵巣刺激をどの方法で、どのぐらいの強さで実施するかを決める際に役立つのですが、医師は各々の経験に基づいて数値を読んでいます。私は、4以上は高め、24が適度な値(正常値という意味ではありません)、1.5以下はやや低い、1.0以下は低い、0.5以下はかなり低いと読んでいます(単位はすべてng/ml)。この読み方は、他の医師と多少ずれがあるかもしれませんので、ご了承ください。

 

AMHについて2回にわたって書きましたが、ご理解いただけたでしょうか。それでは、また読みに来てください。

 

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