体外受精が必要かどうか、どうやって判断したらいいの?
こんにちは 院長の雀部です。
診察室でよく遭遇する患者さんの疑問や誤解の第5弾です。今回は、体外受精の適応(体外受精をやる必要があるかないか)がテーマです。
当院では、体外受精をやった方がいいのかどうか判断に迷っているご夫婦の相談も受け付けています。体外受精の専門クリニックで、体外受精をやった方がいいかどうかを相談したら、体外受精を勧められるに決まっているじゃないという声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。私は、過剰医療が嫌いなので、必要が無い方には必要ありませんとはっきり言います。それでも、受診して相談するのは、心理的にハードルが高いですよね。そこで、自分でも大まかな目安がつけられるように、わかりやすく解説します。
A 明確な医学的適応があるご夫婦
1 卵管が詰まっていると指摘された方
2 子宮内膜症を指摘されたことのある方
3 抗精子抗体陽性と指摘された方
4 精子が少ない、または運動性が低いと指摘された方
これらの指摘は純粋に医学的問題なので、ご夫婦が悩む必要はありません。産婦人科医が考えて判断する問題になってきます。指摘してくれた先生に、体外受精が必要かどうかを相談してください。もし専門医の意見を聞きたいという方は、「相談希望」と連絡していただければ、相談の診察予約をお取りします。
B 明確な医学的適応がないご夫婦
問題となるのは、不妊検査で特に異常が見つからない(いわゆる原因不明の)ご夫婦、そしてまったく不妊検査・治療歴がないご夫婦です。体外受精に踏み切る明確なきっかけが無いので、タイミングを逃してずるずると年を重ねてしまうことになりかねません。かえってAの1~4に当てはまり、体外受精が必要と判断されたご夫婦の方が、明確なきっかけが目前にあるため、早い時期に体外受精に踏み切ることにより、最終的にいい結果が得られる可能性もでてきます。
このような明確な医学的適応がないご夫婦は、「奥様の年齢」を目安に判断してください。
1 奥様が40代
残念ながら、一般不妊治療をやっている暇はありません。すぐに体外受精に踏み切ってください。体外受精をすぐにやったとしても、苦戦する可能性があります。
2 奥様が20代~30代前半
一般不妊治療を一定期間やって妊娠しない場合は、体外受精の適応になります。ただし、一般不妊治療をダラダラやっているとあっという間に時が過ぎていきますので、ある程度集中して、期間を区切って治療を受ける必要があります。目安としては1~2年一般不妊治療をやって、妊娠しない場合は体外受精に踏み切った方がいいと思います。
3 奥様が30代後半
ここに該当するご夫婦が最も注意が必要です。そして、自分で考えて、自分で動かないと、誰も何も言ってくれません。この時期の時間の使い方で、最終的な結果が大きく変わってきます。
「一般不妊治療を一定期間(半年から1年)やって、結果が出ていない」、「抗ミューラー管ホルモン(AMH)低値を指摘された」、「FSH基礎値が高いといわれた」など、ひとつでもネガティブな条件が加わった場合は、早めに体外受精に踏み切ることを勧めます。
そのような条件が無い方は、半年~1年ほど一般不妊治療をやって妊娠しない場合は、体外受精という流れになります。ただし、絶対に避けてほしいのが、30代後半を一般不妊治療で過ごしてしまい、40歳になってから、あわてて体外受精に踏み切るというパターンです。「40歳を過ぎても体外受精をやればなんとかなるから大丈夫」という根拠のない思い込みをしている方がいますが、かなり背水の陣です。体外受精まで含めた治療で、40歳までに妊娠・分娩を終えるつもりで臨んでください。
ここまで述べてきた体外受精に踏み切るタイミングは、皆様が考えていたよりかなり早いタイミングだったのではないかと思います。不妊治療は、時間との戦いです。少しでも早い時期に、精度の高い治療を受けることにより、最終的な結果が変わってきます。お金や時間を理由に治療を先延ばしにしても、年を重ねれば重ねるほど、さらにお金も時間もかかってきます。この記事を参考に、適切な時期に治療を決断してください。ご夫婦だけで判断がつかない場合は、「相談希望」と連絡していただければ、相談の診察予約をお取りします。
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