障害のある子が生まれてきませんか?続き
2017.12.07
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
権威ある臨床系医学誌として知られているThe New England Journal of Medicine の論文を紹介します。
Davies, M. J., et al. (2012). “Reproductive technologies and the risk of birth defects.” N Engl J Med 366(19): 1803-1813.
この論文は、南オーストラリアにおいて出産した児(少なくとも妊娠20
週
以上、または児の体重400g以上)を、生殖補助医療による妊娠
308,974出産の内、6163出産が生殖補助医療後でした。先天異常の発生率は、生殖補助医療後8.3%、自然妊娠後5.8%、オッズ比 1.47 (95%信頼区間 1.33 to 1.62、有意差有り)、統計学的手法で2つの集団の患者背景を揃えても “m_-8602038763293247356gmail-m_8040340376616567086m_-522979444691359798m_2329086539946285083m_7725959433036344901m_8958807163975899867m_-1942550439869625045m_-525620521681068529m_4250677837263473956m_9125515447625035433gmail-m_4492025635242834526m_-7965906282369665206m_-2305379080513267422m_1075017873383936896m_-7502017566360853007m_3918022202493277755m_-1814486278882210921m_-6463573320146674634gmail-m_-7767486792252259919m_-8881467594517365266m_-3201155782578100780m_4798737345922727715m_-2248658464356425723m_3815472123796632402m_-5419608111733568014m_-4876470790970361577m_6198857968346821657m_6117039973158498511m_6130372403882044305m_-3145919760577755336m_3287250736236919760m_-7686158712470246911m_-7211253833162693018m_5339755431168061101m_2183354042966450697__reader_view_article_wrap_8971098880760939__ m_-8602038763293247356gmail-m_8040340376616567086m_-522979444691359798m_2329086539946285083m_7725959433036344901m_8958807163975899867m_-1942550439869625045m_-525620521681068529m_4250677837263473956m_9125515447625035433gmail-m_4492025635242834526m_-7965906282369665206m_-2305379080513267422m_1075017873383936896m_-7502017566360853007m_3918022202493277755m_-1814486278882210921m_-6463573320146674634gmail-m_-7767486792252259919m_-8881467594517365266m_-3201155782578100780m_4798737345922727715m_-2248658464356425723m_3815472123796632402m_-5419608111733568014m_-4876470790970361577m_6198857968346821657m_6117039973158498511m_6130372403882044305__reader_view_article_wrap_0016969404224584927__ m_-8602038763293247356gmail-m_8040340376616567086m_-522979444691359798m_2329086539946285083m_7725959433036344901m_8958807163975899867m_-1942550439869625045m_-525620521681068529m_4250677837263473956m_9125515447625035433gmail-m_4492025635242834526m_-7965906282369665206m_-2305379080513267422m_1075017873383936896m_-7502017566360853007m_3918022202493277755m_-1814486278882210921m_-6463573320146674634gmail-__reader_view_article_wrap_4053617306690791__ m_-8602038763293247356gmail-m_8040340376616567086m_-522979444691359798m_2329086539946285083m_7725959433036344901m_8958807163975899867m_-1942550439869625045m_-525620521681068529m_4250677837263473956m_9125515447625035433gmail-m_4492025635242834526m_-7965906282369665206m_-2305379080513267422m_1075017873383936896m_-7502017566360853007m_3918022202493277755__reader_view_article_wrap_5339482807146354__” style=”font-family: "ms pgothic", sans-serif;”>オッズ比1.28 (95%信頼区間 1.16 to 1.41、有意差有り)でした。技術別に先天異常の発生率をみますと、体外受精 7.2%、オッズ比1.26 (95%信頼区間 1.07 to 1.48、有意差有り) 、患者背景を揃えると1.07 (95%信頼区間 0.90 to 1.26、有意差無し)、顕微授精9.9%、オッズ比1.77 (95% 信頼区間 1.47 to 2.12、有意差有り) 、患者背景を揃えると1.57 (95%信頼区間 1.30 to 1.90、有意差有り)でした。
※オッズ比の95%信頼区間が、1をまたぐと「有意差無し」、1をまたいでなければ「有意差有り」です。
「顕微授精危ないじゃん!」と早ガッテンしないでください。この研究は、後方視的研究のためデータの信頼性が低いのです。「ここまで話を引っぱっといて、データの信頼性が低いとはどういうこと?」と怒らないで、もう少しお付き合いください。
一般に、研究方法には後方視的研究と前方視的研究があり、前方視的研究の方がデータの信頼性が高くなります。特に、前方視的研究の中でもランダム化
(バイアスを
比較
試験という方法で
出
されたデータの信頼性が
排除できるため)
最も高い
と言われています。最近、
The New England Journal of Medicineのような一流誌は、ランダム化比較
試験による研究でないと掲載されない傾向にあります。では、なぜ
、
後方視的研究にかかわらず掲載されたのでしょうか?
それは、体外受精
ム化
・顕微授精
の技術自体が先天異常を増やすかどうかを検証する研究
で、ランダ比較
試験を行うのが非常に困難だからです。
s=”gmail_default” style=”display: inline;”>なぜ困難なのか?その理由①、今回紹介した論文が示すように、たくさんの症例を集
有意
差が出るテーマのため、
大
規模なランダム化
比較
試験を行
う必要があります。そのためには、たくさんの人員と予算が必要です
。その理由②、患者背景によるバイアスを完全に除くためには、自
・
出産後2年以内
かつ奥様が35才未満
のご夫婦)を集めて、次の妊娠する際に、このご夫婦は自然妊娠、
このようにランダム化比較試験の実現が難しいテーマに関しては、後方視的研究でも大規模なものであれば一流誌に掲載されることになります。しかし、いくら一流誌に掲載されたとしても、結局は後方視的研究ということで、もし適切な設計のランダム化比較試験を行ったら、有意差は無くなってしまうのではという疑念が常につきまとうことになるのです。
このような状況下で、我々はどのように対応したらいいのでしょうか?
後方視的研究なので、結論にはなり得ませんが、参考データとして尊重はする必要があります。最近、受精しないとイヤだからという理由で、適応のない顕微授精が気軽に行われる傾向にあります。顕微授精の適応は、
「男性因子」、
「受精障害」、「抗精子抗体陽性」のみです。
前回の記事でも書いたように、技術の運用に際しては、「必要最小限の治療に留める」、「目先の妊娠率に惹かれて過剰医療を行わない」など、慎重な姿勢が必要です。