食事や栄養素の話が続いたところで、妊娠しやすい身体
づくり
の重要性について話をしておきます。
奥様の年齢
など背景
条件
がほとんど
同じご夫婦
に対して
、
同じやり方で
体外受精をやったとします。その結果、
すぐ妊娠するご夫婦と
、繰り返し体外受精をやらないと
妊娠しないご夫婦がいます。その差は何
だと思いますか
?
運でしょうか?
私は、体質の差
だ
と思
っています
。
一般に、西洋医学では、検査で異常値または異常所見を示した時、多くの場合
で
それは疾患を意味し、治療の対象になってきます。逆に、正常範囲に入っている
時
は治療の対象となりません。ところが、正常範囲には幅があり、治療の対象とならない正常範囲の方でも、いろんな状態の方がいらっしゃいます。ある検査項目に注目してみても、全く正常の方と異常に近い正常の方がいらっしゃ
います
。このような、疾患として扱われない範囲内での身体の状態の差が、体質の差となってきます。
身体の状態が不健康な方向に向かうと、まず影響を受けるのが生殖です。
生物は、個体が健康だと身体のメンテナンスに費やすエネルギーが最小限で済み、生殖の方にエネルギーを振り向けることができます。ところが、個体の健康状態が悪化すると、生殖に振り向けるべきエネルギーが削られて、身体のメンテナンスの方に振り向けられてしまいます。なぜなら、生物にとって、個体の維持の方が、生殖より優先順位が高いからです。よって、少しでも身体が不健康な方向へ傾くと、真っ先に生殖の力が落ちることになるわけです。
このように生殖の力が落ちている状態で体外受精をやると、採卵しても卵子が回収できなかったり、卵子が回収できても変性卵だったり、異常受精したり、胚発育が不調だったり、胚移植しても着床しなかったりなど、
いろいろな段階で引っかかることになります。
「そこを、技術の力でなんとかできないんですか?」と、
よく患者さんから聞かれます。
そもそも体外受精と言うのは、生殖補助医療と言われる通り、妊娠を補助
する技術
です。
妊娠のいろいろな過程をショートカットすることはできますが、配偶子(
精子または卵子
)
自体に妊娠する力が
ない
と
、
体外受精の技術でなんとかするのは
難しくなってきます
。
ところで、診察室ではいろんなタイプの患者さんに会います。よく見かけるパターンを見てみましょう。
1 今まで一般不妊治療をやってる間は
生活習慣の
改善などに取り組んでいたのに、体外受精をやることが決まった途端投げ出してしまう方
「高いお金を払って体外受精をやることになったのだから、もう自分で努力をする必要はない。体外受精の技術が何とかしてくれるだろう
。
」と心のどこかで思っている
方です
。
2
医師や看護師に
言われていろいろ始めてみるのだけども、すぐに投げ出してしまう方
身体づくり
の重要性を、頭でわかっていても
実感
できていないので、
ちょっとしたことで
すぐ投げ出してしまう方です。
3 そもそも妊娠しやすい
身体づくり
が重要であるという発想が全くない
、
またはそういうものを馬鹿にしている方
ひょっとして、当てはまっている方いませんか? 共通しているのは、自分の力で妊娠するんだという意識が薄く、他力本願状態になっていることです。
体外受精の技術を用いたとしても、技術の力で妊娠させてもらうのではなく、技術の助けを借りてあなた自身の力で妊娠するしかありません。もし仮に
、身体の状態があまり良くない状態で、なんとか
体外受精の技術力で
のりきっ
たとしても、
妊娠した後に
妊娠性高血圧症
、妊娠性糖尿病
などの母体合併症
が待っている可能性もあります
。
体外受精をやることになったとしても、妊娠するのは自分であるということを意識して、身体づくりに取り組んでください。