タイムラプス de 性別診断?
前回、タイ
ムラプスシステムの導入によって胚の形態的評価の精度が上がる可能性について書きました。タイムラプス関連の論文を探している最中に、面白い論文を見つけました。
タイムラプス動画より得られる胚の発育に関するパラメーターと胚の性
別
の関連を調べています。たくさんのパラメーターについて調べていますが、そのうち2つのパラメーター
が
関係
している
ことがわかりました。s2(3細胞期から4細胞期に至る時間)、tM(桑実胚に至る時間) です。s2が2時間以上かつtMが80.8–90.9時間の胚は、女性胚である可能性が高いらしいです。この2つの条件を両方とも満たす胚は71%が女性胚、両方とも条件を満たさない胚は42%が女性胚で、統計的に有意差を認めたというものです。
「男性胚と女性胚は、発育のしかたが微妙に違う」と以前より言われていましたが、それをデータで裏付けた論文です。
ここで、胚の性
別
が決まるしくみをおさらいしときましょう。(知っている方は飛ばしてください)
卵子は、X染色体を1つ持っています。精子は、X染色体を1つ持った精子とY染色体を1つ持った精子がいます。X染色体を持った精子が卵子と受精すると女性胚、Y染色体を持った精子が卵子と受精すると男性胚になります。X染色体を持った精子とY染色体を持った精子の比は、理論的には1:1です。よって、人為的な操作が加わらなければ、女性胚と男性胚の比は1:1になります。
体外受精で性比のバランスが崩れる?
その人為的操作の最たるものが生殖補助医療です。
「
人為的に精子、卵子、胚を扱うことによって、知らないうちに性比バランスが崩れるのではないか
?」
という懸念が
、
以前より
専門家の間では
ありました
。
その懸念を検証した論文を紹介しておきます。
Maalouf, W. E., et al. (2014). “Effects of assisted reproductive technologies on human sex ratio at birth.” Fertil Steril 101(5): 1321-1325.
2000年から2010年まで、イギリスにおいて、生殖補助医療の結果生まれた106,066人の
児の
性比を調べています。体外受精の結果生まれた
児のうち
男児の比率
は0.521(つまり男児の方が多い)、顕微授精
では
0.493(つまり女児の方が多い)でした。体外受精、顕微授精ともに、胞胚期胚移植
による
男児の比率の方が、分割期胚移植による男児の比率よりも約6%多かったそうです。
X精子とY精子は見分けられる?
ところで、顕微授精を行う際、胚培養士が良好精子を目視で選びます。医学的にこのような形またはこのような動きをする精子は良好な精子というある程度の基準があります。しかし、最終的な精子の選択は、胚培養士の判断に任されています。
(ここから先の話は、都市伝説レベルの話で、エビデンスは全くありません。)
以前より、X精子とY精子には、顕微鏡でちょっと見た程度ではわからないレベルの微妙な形の違いがあると言われています。この人間の目では見分けることの難しいレベルの違い
が
、長年にわたり毎日精子を見ているベテランの胚培養士に
は
、なんとなく
わかるらしいです。
強者の胚培養士になると、こ
の精子はX精子っぽいとか、Y精子っぽいとかいうのが感覚的にわか
り、
顕微授精の際に
結構な確率でX精子とY精子を打ち分けることができるとかできないとか
・・・。
※ 本記事は、男女産み分けを推奨するものではありません。また、当院において男女産み分け、性別診断等の診療は行っておりません。