幸町IVFクリニック

院長

男性のタバコと妊娠

2018.04.12

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

前回、妊娠しやすい身体づくりには睡眠が重要だという話をしました。今回は、タバコの話です。

昨今の禁煙ブームで、喫煙者はさぞかし肩身が狭い思いをしているのではないでしょうか?私自身も30代半ばまで喫煙者だったので、なんとなく気持ちが分かります。そして、追い打ちを掛けるように不妊クリニックでまたタバコの話をされて、もううんざりという顔している患者さんをよく見かけます。

当院では、喫煙している方に禁煙を勧めています。奥様は、必ず禁煙していただき、禁煙できるまで治療に入りません。ご主人は、禁煙できるまで治療に入りませんとまでは言いませんが、極力禁煙を勧めています。

女性側は、自分が妊娠するんだという実感があるためか、意外とすんなりと禁煙の勧めを受け入れてくれます。困るのが、男性側です。男性側の喫煙と妊娠の関係が、どうも実感できないようで、協力が得られないケースが多々あります。よく奥様から、「いくら言っても主人が聞いてくれないので、先生から直接言ってもらえませんか?」と頼まれることがあります。

そこで、今回は男性側のタバコと妊娠の関連について話したいと思います。さっそく論文を紹介します。

Kovac, J. R., et al. (2015). “The effects of cigarette smoking on male fertility.” Postgrad Med 127(3): 338-341.

男性の喫煙と妊娠の関係がわかりやすくまとまっているreviewです。ネット上で全文読めます。皆様が気になると思われる部分を、引用されている文献を提示しながら説明します。

まず、タバコが精液検査の結果に及ぼす影響についてです。
Ramlau-Hansen, C. H., et al. (2007). “Is smoking a risk factor for decreased semen quality? A cross-sectional analysis.” Hum Reprod 22(1): 188-196.

2542人の健康男性を対象とした横断的研究です。喫煙男性は、精液検査のパラメーターである精液量、精子濃度、精子運動性のすべてにおいて、非喫煙男性と比較して低い結果でした。さらに、喫煙と精子濃度の関係は、1日のタバコの本数に依存して悪化する傾向にあり、1日20本以上のタバコを吸う男性は、非喫煙者と比較して19%精子濃度が低下しました。

次に、男性の喫煙が生殖補助医療の成績に及ぼす影響についてです。
Fuentes, A., et al. (2010). “Recent cigarette smoking and assisted reproductive technologies outcome.” Fertil Steril 93(1): 89-95.

生殖補助医療の治療を受ける166組のカップルを対象に行われた前向きコホート研究です。男性側の喫煙により生産率が21.1%から7.8%に低下することが報告されています。

そして、副流煙にも注意が必要です。
Neal, M. S., et al. (2005). “Sidestream smoking is equally as damaging as mainstream smoking on IVF outcomes.” Hum Reprod 20(9): 2531-2535.

生殖補助医療を受けた225人の女性を対象とした後向き研究です。自身が喫煙する38人、ご主人が喫煙するため副流煙に暴露される環境にいる40人、非喫煙者146人の着床率はそれぞれ12.0%、12.6%、25.0%、妊娠率はそれぞれ19.4%、20.0%、48.3%でした。ご主人が喫煙するため副流煙に暴露される環境にいる女性は、自身が喫煙者の女性と同程度の着床率、妊娠率であることが報告されています。

どうでしょう? 男性側のタバコが、いかに治療の成績に悪影響を及ぼしているかがよくわかると思います。

タバコの害が、どれだけ医学的に証明されても、喫煙者は自分だけは大丈夫と心のどこかで思っています。タバコの害については思考停止状態になっていますので、まわりからいくら言われても心に響きません。でも、論理的に物事を考える習慣のある方は、データを突きつけると意外と素直に受け入れてくれることがあります。試しに、このブログの内容を話してみたらどうでしょう。

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