果物とファストフード
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
今回は、食生活と妊娠のしやすさについてです。不妊クリニックで食生活など生活習慣に注意するように言われても、何をどうすればいいのかわからない方が多いと思います。その答えとまではいきませんが、参考になる論文が発表されています。今月発表されたばかりの最新の論文です。
Grieger, J. A., et al. (2018). “Pre-pregnancy fast food and fruit intake is associated with time to pregnancy.” Hum Reprod.
5598人の女性を対象とした研究です。内訳は、何らかの不妊治療を受けた方340人、受けていない方5258人です。妊娠14-16週の診察時に、後方視的にデータを収集しています。
その結果、果物の摂取頻度の低い方、ファストフードの摂取頻度の高い方は、妊娠までに時間がかかり、妊娠までに12ヶ月以上を要する方の割合が増える傾向にありました。果物とファストフードそれぞれの最も頻度の高い群と最も低い群の比較では、妊娠までに要した時間は0.6-0.9ヶ月程度、妊娠までに12ヶ月以上要した方の割合は4-8%程度の差がありました。緑色葉野菜と魚は、妊娠までに要した時間、妊娠までに12ヶ月以上を要する方の割合に影響しませんでした。
妊娠を目指す方は、果物をよく摂り、ファストフードをなるべく避けた方がいいようです。
この論文のように、妊活における生活習慣の見直しや妊娠しやすい身体づくりの重要性をテーマとする論文が近年ものすごく増えており、毎月のように発表されています。それに伴い、医療側の意識も変わってきていますし、患者さんの理解も進んできています。
10年前に、患者さんに生活習慣の改善の必要性や妊娠しやすい身体づくりの重要性を説いても、一部の患者さんを除いてほとんど聞き流されていた状況とは、隔世の感があります。今や、不妊治療と並行して体質改善に取り組むのは、当たり前のことになってきました。
これは、体外受精の治療を受けている患者さんにも当然当てはまりますし、むしろ体外受精をやることになったからこそ体質改善にいっそう力を入れる必要があると思います。
当院は、ただ体外受精をやるだけではなく、妊娠しやすい身体づくりもいっしょに指導していく方針で、日々の診療に取り組んでいます。また、診療だけに留まらず、このブログでも役に立つ情報をなるべくわかりやすく発信していきますので、ぜひまた読みに来て下さい。