幸町IVFクリニック

院長

レスキューICSI

2018.05.24

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、レスキューICSIの話題です。

「レスキューICSIって何?」という方のために少し説明しておきます。

通常の体外受精(媒精)を行った場合、受精の確認を採卵日の翌日朝に行います。この段階で未受精だと、卵子はそのまま廃棄になってしまいます。ところが、この廃棄になってしまう卵子の中には、顕微授精をやれば救える卵子が含まれています。そのような卵子を救う顕微授精ということで、レスキューICSIという技術が考案されました。

一昔前のレスキューICSIは、採卵日の翌日朝の受精確認の際に、未受精だった卵子に対して行っていました。しかし、このやり方だと受精率も妊娠率も悪く、とても臨床で使えるレベルの技術ではありませんでした。

近年行われているレスキューICSIは、採卵当日に行います。そうすると、受精率、妊娠率が大きく改善します。当院でも、大活躍の技術です。この技術が使えれば、受精しないとイヤだからという理由で、適応の無い顕微授精をやる必要がなくなってきます。

このレスキューICSIの成績をまとめた論文を紹介します。

Huang, B., et al. (2015). “Neonatal outcomes after early rescue intracytoplasmic sperm injection: an analysis of a 5-year period.” Fertil Steril 103(6): 1432-1437 e1431.

13,232周期を対象とした後ろ向き研究です。内訳は、体外受精9,631例、顕微授精2,871例、レスキューICSI 730例です。それぞれの妊娠率(胚移植当たり)は、体外受精45.33%、顕微授精44.39%、レスキューICSI 43.42%でした。生産率は、体外受精36.40%、顕微授精37.91%、レスキューICSI 33.67%でした。多胎妊娠率、分娩方法、平均妊娠期間、早産率、平均出生時体重、先天性異常率についても、レスキューICSIは、体外受精、顕微授精と比較して同等の結果でした。

結論として、レスキューICSIは、体外受精や顕微授精と比較して、同等の妊娠率、生産率が得られ、安全性についても同等の技術であると述べています。

このように、採卵当日に行うレスキューICSIは、成績も安全性も問題の無い、臨床レベルで使える技術です。この技術があれば、受精しないとイヤだからという理由だけで、最初から顕微授精をやる必要はありません。媒精を行い、未受精だったらレスキューすればいいのです。皆さんもこの技術を使って、必要最小限の治療で妊娠を目指しましょう。

最後にひと言
適応のない顕微授精は、過剰医療です。

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