慢性子宮内膜炎による着床不全
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
今回は、慢性子宮内膜炎の話です。
着床不全の原因には、いろいろとありますが、そのひとつとして慢性子宮内膜炎が、最近注目を集めています。診断方法は、子宮鏡検査、病理組織検査、培養検査などがありますが、ゴールドスタンダードは、病理組織検査です。子宮内膜生検を行い、病理検査に提出します。病理検査では、免疫染色という方法で、炎症細胞のひとつである形質細胞を診断します。
今月発表されたばかりの論文を紹介します。
Vitagliano, A., et al. (2018). “Effects of chronic endometritis therapy on in vitro fertilization outcome in women with repeated implantation failure: a systematic review and meta-analysis.” Fertil Steril.
メタ解析という方法で、5つの研究をまとめて解析しています。5つの研究の計796人の女性が対象です。慢性子宮内膜炎を治療した群は、未治療の群と比較して、継続妊娠率/生児獲得率(オッズ比6.81)、臨床的妊娠率(オッズ比4.02)、着床率(オッズ比3.24)が改善することがわかりました。慢性子宮内膜炎が治癒すると、慢性子宮内膜炎が無い方と同等の継続妊娠率/生児獲得率、臨床的妊娠率、着床率が得られることがわかりました。流産率については、各群間に有意差はありませんでした。
結論として、慢性子宮内膜炎の治療は、反復着床不全の患者さんの体外受精の成績を改善する可能性がある(may improve)と述べています。
当院でも、良好胚を2回以上移植しても妊娠しない方に、この慢性子宮内膜炎の検査を勧めています。
患者さんの状況によっては有効な検査ですが、欠点は少し痛いことです。「どのくらい痛いですか?」とよく聞かれます。痛みを表現するのって難しいですが、「子宮卵管造影検査程度の痛みです。」と説明しています。希望の方は、鎮痛目的の座薬を使用することも可能です。
ブラックボックス状態だった着床不全も、解決の糸口がいろいろと見えてきました。近い将来、着床不全が克服される日が来るかも知れません。このブログでも、生殖医療の新しい知見をわかりやすく紹介していきますので、また読みに来てください。