低反応卵巣の卵巣刺激法
幸町IVFクリニック 院長 雀部です。
今回は、低反応卵巣と診断された女性に対する卵巣刺激法の話です。
低反応卵巣の定義として有名なのが、Bolognaクライテリアです。正確を期すために原文も載せておきます。
以下の3つの特徴の内、少なくとも2つが存在すること
女性が40歳以上または低反応卵巣に関係する他のリスク因子
ロング法やアンタゴニスト法後の採卵で卵子3個以下だった既往
胞状卵胞数 5-7個以下またはAMH 0.5-1.1ng/ml以下
この低反応卵巣に対する卵巣刺激法は、薬剤をあまり使わない低刺激がいいのか、または普通に薬剤を使用する通常刺激がいいのかを検証し、アメリカ生殖医学会のガイドラインとしてまとめた論文を紹介します。今月発表されたばかりです。
HMGまたはFSH150単位以下の注射を連日打つ低刺激法と通常量(225単位以上)を連日打つ通常刺激法を比較した結果、臨床妊娠率に実質的な差はない。
経口剤と150単位以下の注射を併用する低刺激法と通常量(225単位以上)を連日打つ通常刺激法を比較した結果、臨床妊娠率に実質的な差はない。
経口剤のみの低刺激法と通常量(225単位以上)を連日打つ通常刺激法の比較に関しては、十分なエビデンスが得られていない。
完全自然周期と通常量(225単位以上)を連日打つ通常刺激法を比較した結果、臨床妊娠率に実質的な差はない。
つまり、低反応卵巣の女性に対しては、マイルドな刺激を行っても、注射をガンガン打っても、成績はあまり変わりませんよという内容です。それなら、コスト的にも安く、身体の負担の少ないマイルドな刺激法がいいですよね。
私も、低反応卵巣の患者さんには、低刺激法を勧めています。注射をガンガン打つ方法は、ただでさえ弱り気味の卵巣にさらにムチを打つようなもので、あまりお勧めできません。
この様な話をすると、低刺激法が優れた方法、通常刺激法は劣った方法のように勘違いされる方がいますが、そうではありません。通常刺激法は、卵巣に十分余力がある(卵巣予備能が十分にある)患者さんに対しては、優れた方法です。卵巣刺激法の選択に際しては、患者さんの卵巣の状況をよく見極めることが重要です。