38歳未満の低反応卵巣
幸町IVFクリニック 院長 雀部です。
またまた低反応卵巣の話です。
同じ低反応卵巣でも、年齢が若い方と年齢が高い方では、卵子の質が異なってきます。低反応卵巣というのは、卵子の数(量)の問題で、卵子の質は別の問題です。卵子の質に関しては、実年齢が指標として優れています。
【過去の参考記事】
AMH=卵巣年齢って本当?
40代だけどAMHが高いからまだ大丈夫?
38歳未満の低反応卵巣の女性の卵子の質について検証した論文を紹介しましょう。7月に発表されたばかりです。
Morin, S. J., et al. (2018). “Diminished ovarian reserve and poor response to stimulation in patients <38 years old: a quantitative but not qualitative reduction in performance.” Hum Reprod.
採卵時点で38歳未満の女性を対象とした研究です。体外受精前に測定した抗ミューラー管ホルモン(AMH)が0.5ng/ml以下の345人(124人)と1.1-4.5ng/mlの1758人(782人)、体外受精後に回収卵子数が5個以下だった535人(156人)と10-21個だった2675人(1100人)をそれぞれ比較しています。(括弧内は、着床前異数体検査(PGT-A)を受けた人数)
評価項目は、胞胚形成率、異数体率(PGT-Aを受けた方のみ)、正倍数体の胚を移植したときの生児獲得率(PGT-Aを受けた方のみ)です。
まず、体外受精前のAMH0.5ng/ml以下の345人(124人)と1.1-4.5ng/mlの1758人(782人)の比較では、胞胚形成率、異数体率、正倍数体の胚を移植したときの生児獲得率、すべての項目で有意差なしでした。
次に、体外受精後に回収卵子数が5個以下だった535人(156人)と10-21個だった2675人(1100人)の比較では、胞胚形成率は、回収卵子数5個以下の535人の方が、有意に高い結果でした。異数体率、正倍数体の胚を移植したときの生児獲得率に関しては、有意差無しでした。
回収卵子数5個以下の535人の方が、胞胚形成率が高かった理由については、採卵のタイミングを決める際に、卵胞の数が少ない方が、卵胞の成熟性の判断がより正確になるためではないかと考察しています。
体外受精前のAMH低値のため卵巣予備能低下と診断された方、体外受精後の回収卵子数が少なく低反応卵巣と診断された方、両者とも採卵時の回収卵子数は少ないですが、年齢が38歳未満であれば卵子の質に影響するものではないという結果でした。
ただし、AMHが低くても、38歳未満であれば大丈夫というわけではありません。38歳未満でも、AMH低値の方の中に早期閉経をきたす方がいらっしゃいます。AMH低値の方は、年齢に関わらず積極的な治療が望まれます。
【過去の参考記事】