幸町IVFクリニック

院長

着床率向上の秘策?ー子宮内膜スクラッチ法ー

2018.09.13

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

子宮内膜を傷つけて着床率を上げる子宮内膜スクラッチ法というのをご存知ですか?子宮内膜を傷つけるとなぜ着床率が上がるのか不思議ですよね。着床率が上がる機序はまだはっきりとは解明されていませんが、着床不全対策としてすっかり定番の方法となりつつあります。

子宮内膜スクラッチ法のランダム化比較試験もたくさん発表されています。今回紹介するのは、いくつものランダム化比較試験をメタ解析という方法でまとめて解析した論文です。今月発表されたばかりの最新の論文です。

Vitagliano, A., et al. (2018). “Endometrial scratch injury for women with one or more previous failed embryo transfers: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.” Fertil Steril 110(4): 687-702 e682.

対象患者は、体外受精(顕微授精)-胚移植法 において、1回以上着床不全の既往がある方です。子宮内膜スクラッチ法の介入を行ったグループとコントロールのグループ(偽の介入または介入なし)を比較しています。10の研究についてメタ解析を行い、対象患者数は延べ1,468人(子宮内膜スクラッチ法を行った733人とコントロール735人)です。

生児獲得率は子宮内膜スクラッチ法のグループの方が有意に高く(リスク比1.38、95%信頼区間1.05-1.80)、多胎妊娠率、流産率、異所性妊娠率に有意差はありませんでした。

胚移植の前周期の高温相に2回子宮内膜スクラッチを行ったグループで特に効果が高く、生児獲得率(リスク比1.54、95%信頼区間1.10-2.16)、臨床妊娠率(リスク比1.30、95%信頼区間1.03-1.65)ともに有意に高い結果でした。

着床不全の既往回数との関係は、2回以上の患者さんには効果がありましたが、1回の患者さんには効果がありませんでした。

凍結融解胚移植の患者さんには、効果がありませんでした。

子宮内膜スクラッチ法は、着床不全の既往が2回以上ある患者さんの新鮮胚移植において、結果を改善する可能性があると結論づけています。

凍結融解胚移植の患者さんには効果がないというのは、意外ですね。私の経験では、患者さんによっては効果があると思うのですが・・・

論文のディスカッションでは、凍結融解胚移植の患者さんに効果がない理由として、凍結融解胚移植周期はすでに正確に内膜の準備ができている可能性が高く、排卵誘発剤などによる早発子宮内膜成熟(premature endometrial maturation)のリスクが低いためと推測しています。

まだまだ議論の余地のある方法ですが、着床不全を繰り返しているご夫婦は、試してみる価値のある方法だと思います。

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