幸町IVFクリニック

院長

1個胚移植がやっぱり安全

2018.09.27

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

Vanishing twinというのを、ご存じですか?「消える双子」という意味ですが、妊娠12週以前の妊娠初期に生じた双胎1児死亡をvanishing twinといいます。文字通り、死亡した児は、消えて見えなくなってしまいます。

一般に、vanishing twinが起きても、残った児に対する影響はないと言われています。ところが、体外受精妊娠に関して検討してみると、まったく影響が無いとは言い切れないようです。

9月に発表されたばかりの最新の論文です。

Kamath, M. S., et al. (2018). “Perinatal outcomes of singleton live births with and without vanishing twin following transfer of multiple embryos: analysis of 113 784 singleton live births.” Hum Reprod.

 イギリスにて1991年~2011年の間に行われた新鮮胚移植508,410例の結果妊娠した単胎妊娠95,779例、融解胚移植131,157例の結果妊娠した単胎妊娠18005例が対象です。

主要評価項目は、妊娠37週未満の早産と2500g未満の低出生体重児の率です。

まず、新鮮胚移植症例です。1個胚移植の妊娠例と比較して、2個以上の胚移植後のvansihing twin症例は有意に早産率が高く(補正後オッズ比2.70、95%信頼区間2.37-3.05)、低出生体重児率も高い(補正後オッズ比2.76、95%信頼区間2.44-3.13)ことがわかりました。2個以上の胚移植後でも最初から単胎妊娠の症例は、1個胚移植の妊娠例と比較して、早産率、低出生体重児率に有意差はありませんでした。

次に融解胚移植症例です。1個胚移植の妊娠例と比較して、2個以上の胚移植後のvansihing twin症例は有意に早産率が高く(補正後オッズ比2.13、95%信頼区間1.55-2.93)、低出生体重児率も高い(補正後オッズ比2.61、95%信頼区間1.87-3.64)ことがわかりました。2個以上の胚移植後でも最初から単胎妊娠の症例は、1個胚移植の妊娠例と比較して、早産率、低出生体重児率に有意差はありませんでした。

2個以上の胚移植後の妊娠において、vanishing twinと早産、低出生体重児のリスクには関連性があると結論づけています。

やっぱり体外受精は1個胚移植に限ります。当院では、10年前より全例1個胚移植を行っています。目先の妊娠率に惹かれて2個胚移植せずに、1個胚移植で安全な妊娠を目指してください。

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これだけ、2個胚移植の危険性が言われているのに、いまだに2個胚移植を行い、2卵性双胎を量産しているクリニックが一部あります。正しい知識を持って、ご自身の意思で、2個胚移植にNOと言いましょう!

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