幸町IVFクリニック

院長

どの腟座薬が優れている?

2018.10.04

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

胚移植前後に行う黄体補充療法に使う腟座薬の話です。

現在日本では、4社から剤形の異なる腟座薬(ゲル)が発売されています。各社の営業が、自社の製品がいかに優れているかを、データを示してアピールするわけですが、当然自社の製品に有利な加工がされているデータを提示されますので、実際のところはよくわかりません。

そこで、実際のところを知りたい現場の医師は、今回紹介するような研究をするわけです。9月に発表されたばかりの最新の論文です。

Duijkers, I. J. M., et al. (2018). “Effect on endometrial histology and pharmacokinetics of different dose regimens of progesterone vaginal pessaries, in comparison with progesterone vaginal gel and placebo.” Hum Reprod.
 
2012年5月~2013年4月、オランダで行われた研究です。

クロスオーバーデザインと言って、同一の対象者に、休薬期間を挟んで異なる薬剤(または偽薬)を投与し、その効果をそれぞれ評価しています。

研究は2つのパートに分かれています。パート1(対象者61人)では、200mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回、400mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回、90mgのプロゲステロンゲルを1日1回、休薬期間を挟んで順次投与しました。パート2(対象者64人)は、低用量群で、100mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回、400mgのプロゲステロン腟座薬を1日1回、対象者の内22人については偽薬を1日2回、休薬期間を挟んで順次投与しました。

それぞれ、エストロゲンを14日間投与後、エストロゲン+プロゲステロンを10日間投与しました。評価方法は、子宮内膜生検による病理診断(プロゲステロン開始9日目)、血中プロゲステロンの薬物動態(プロゲステロン開始1日目と10日目)です。

その結果、病理診断にて、子宮内膜がプロゲステロン製剤に適正な反応を示したのは、200mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回91.8%、400mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回94.0%、90mgのプロゲステロンゲルを1日1回89.9%、100mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回63.5%、400mgのプロゲステロン腟座薬を1日1回75.0%でした。血中薬物動態は、用量に比例はしていませんでしたが、用量に依存してプロゲステロンレベルが上昇しました。投薬中の性器出血は、400mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回が、最も低頻度でした。

結論として、400mgのプロゲステロン腟座薬を1日2回が、子宮内膜の準備方法として最も優れているとしています。

私は、3社のプロゲステロン腟座薬(ゲル)を使用した経験があります。100mg腟座薬を1日3回、90mgゲルを1日1回、400mg腟座薬を1日2回のタイプをそれぞれ使いましたが、最終的に400mg、1日2回投与タイプ(あすか製薬のルテウム)に落ち着いています。私の経験では、この論文のデータは非常に腑に落ちる内容でした。

副作用を抑えるため、低用量で最大限の効果が挙がるように、各社いろいろと工夫しているようですが、やはり一定の用量は必要なようです。

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