幸町IVFクリニック

院長

ご主人の年齢・BMI・精液所見が成績に影響?

2019.01.17

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、ご主人側の因子が体外受精の成績、分娩結果に及ぼす影響についての話題です。

一般に妊活というと、年齢が若い内に妊娠の計画、妊娠し易い身体作り、体質改善など、どうしても女性側に焦点を当てて話しをすることが多いと思います。では、男性側の因子はあまり体外受精の成績、分娩結果に影響しないのでしょうか?

その疑問を実際に検証した論文を紹介します。昨年10月に発表された論文です。

Capelouto, S. M., et al. (2018). “Impact of male partner characteristics and semen parameters on in vitro fertilization and obstetric outcomes in a frozen oocyte donor model.” Fertil Steril 110(5): 859-869.

アトランタで2008-2015年に行われた後ろ向き研究です。凍結ドナー卵子を用いた体外受精、胚盤胞移植を行った949症例が対象です。

なぜ凍結ドナー卵子を用いた体外受精症例を研究対象にしたかというと、ドナー卵子は20代の健康な女性から提供を受けるものなので、一律良好卵子であることが多く、卵子の質のばらつきを最小限にすることができる。つまり、男性側の因子の影響を検討するには理想的な研究モデルということができます。

男性の年齢、BMI、精液所見が、着床率、臨床妊娠率、生児獲得率、単胎妊娠における2500g以下の体出生体重児率、妊娠37週未満の早産率に及ぼす影響を検討しました。

背景情報の補正後、男性の年齢、BMI、精液所見は、着床率、臨床妊娠率、生児獲得率に影響を及ぼしませんでした。素データでは、年齢51歳以上、BMI 35kg/m2以上の男性において、早産率が高値を示しましたが、補正後に有意差は無くなりました。男性の年齢35歳より上、BMI 25kg/m2より高値であることは、低出生体重児率に影響しませんでした。異常精液所見は、早産率、低出生体重児率に影響しませんでした。

結論は、ドナー卵子を用いた体外受精において、男性の高年齢、BMI高値、異常精液所見は、体外受精の成績、分娩結果に影響を及ぼさないというものでした。顕微授精の技術と卵子の質が良好であることが、男性側のマイナス因子を緩和しているのではないかと考察しています。

卵子の力は偉大ですね!
多少精子の質に問題があっても、卵子の質が良ければ、その問題を吸収してしまうだけの力があるということです。でも、卵子の質が微妙だったらどうなるでしょうか?その場合は、精子の質の問題をカバーできずに、体外受精の成績、分娩結果に影響してくる可能性は、”ある”と思います。

卵子に比べると精子の影響は限定的なようですが、だからといって男性側はノーケアでOKということではありません。男性もなるべく年齢が若い内に妊活する、たばこを吸わない、食事・運動に気をつけて体型を保つ、などの努力は必要だと思います。

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