幸町IVFクリニック

院長

体外受精児の小児癌リスク

2019.02.07

 幸町IVFクリニック院長 雀部です。

体外受精などの生殖補助医療は、概ね安全ということで世界中で広く行われていますが、実は体外受精児の長期予後についての研究はほとんど進んでいないのです。インプリンティング疾患や小児癌が増えるなどの報告もありますが、今だに結論は出ていません。

今回は、体外受精児の小児癌リスクについて、平均観察期間21年かつ大規模な研究が発表されましたので紹介します。今月発表されたばかりの最新の論文です。

Spaan, M., et al. (2019). “Risk of cancer in children and young adults conceived by assisted reproductive technology.” Hum Reprod.
「生殖補助医療によって生まれた児の小児癌リスク」

オランダにて1980年~2001年に不妊治療の結果生まれた児を対象とした前向き観察研究です。児の総数47.690人、その内体外受精児24,269人、自然妊娠13,761人、体外受精以外の一般不妊治療妊娠児9,660人です。

平均観察期間21年間、体外受精児の平均観察期間はやや短く20年間、自然妊娠児の平均観察期間24年でした。小児癌は231例に認められました。

すべての小児癌についてまとめて解析すると、体外受精児の小児癌リスクは、自然妊娠児、一般不妊治療妊娠児と比較して、増えませんでした。

体外受精児の18歳以降の癌については、自然妊娠児と比較して、有意差はありませんでしたが、わずかに増えました(HR=1.25, 95%CI: 0.73-2.13)。

顕微授精と凍結融解胚移植の結果生まれた児において、小児癌リスクは、有意差はありませんでしたが、わずかに増えました(顕微授精HR=1.52, 95%CI: 0.81-2.85、凍結融解胚移植HR=1.80, 95%CI: 0.65-4.95)。

リンパ芽球性白血病、悪性黒色腫のリスクは、体外受精児において、自然妊娠児と比較して、有意差はありませんでしたが、わずかに増えました(リンパ芽球性白血病HR=2.44, 95%CI: 0.81-7.37、悪性黒色腫HR=1.86, 95%CI: 0.66-5.27)。

全体として、体外受精児の小児癌リスクは増えないと結論しています。

さらなる研究が必要ではありますが、これだけ大規模な研究で有意差が出ないので、体外受精児の小児癌リスクについては、自然妊娠児と同じレベルと考えていいと思います。皆さん、安心して治療に専念してください。

 

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