幸町IVFクリニック

院長

胚盤胞移植の安全性

2019.08.22

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、胚盤胞移植の安全性についてです。

妊娠率を上げるためは、良好胚を選んで移植する必要があります。そして、現時点で良好胚を選別する方法として最も有効なのは、胚盤胞移植です。

近年、培養液の改良など培養技術が大きく進歩したため、簡単に胚盤胞まで持って行くことができるようになりました。その結果、胚盤胞移植が広く行われるようになり、一昔前には困難であった高い妊娠率が実現しています。

しかし、胚盤胞移植も夢の方法ではありません。長期培養に起因すると推定される一卵性双胎率の上昇が問題になっています。また、早期産児、超早期産児、在胎不当過大児の増加を指摘する報告もあります。

本日は、大規模データーベースを解析して胚盤胞移植の安全性について検証した研究を紹介します。今月発表されたばかりの論文です。

Marconi, N., et al. (2019). “Perinatal outcomes in singleton live births after fresh blastocyst-stage embryo transfer: a retrospective analysis of 67 147 IVF/ICSI cycles.” Hum Reprod.

1999年から2011年までの症例を対象とした後ろ向きコホート研究です。

体外受精または顕微授精の症例67,147の内、胚盤胞移植11,152例、分割期胚移植55,995例でした(凍結融解胚移植、多胎妊娠は除外項目に設定)。

胚盤胞移植と分割期胚移植の症例を比較した結果、早期産、超早期産、超低出生体重児、低出生体重児、高出生体重児、超高出生体重児のリスクは同等でした。

先天異常のリスクは、胚盤胞移植の方が16%高い結果でしたが、統計的有意差はありませんでした。

正期産、正常体重、先天異常なしの健康な児を分娩する機会は、培養延長によって失われることはありませんでした。

培養延長によりわずかに男児の割合が有意に増えましたが、体外受精または顕微授精の治療が初めての症例のみを抽出したサブグループ解析では、男女の割合に有意差はありませんでした。

体外受精または顕微授精の治療が初めての症例のみを抽出したサブグループ解析では、胚盤胞移植の先天異常リスクが有意に高いことがわかりました。

結論は、
「新鮮胚盤胞移植は、早期産、超早期産、低または高出生体重児、先天異常のリスクを増やさない。そして、性比を乱したり、健康な児が生まれる機会を損なうものではない。」
でした。

結論としては、胚盤胞移植はおおむね安全ということですが、解析方法によっては有意差が出たりすることもあるようなので(例えばこの論文のサブグループ解析など)、技術の適応には慎重さが求められます。

当院では、患者さんの置かれている状況をよく見極めて、十分にメリットが見込まれる場合は、積極的に胚盤胞移植を行っています。逆に十分なメリットが見込まれない場合は、分割期胚移植を行うようにしています。

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