幸町IVFクリニック

院長

発育スピードが速い胚

2019.09.05

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、胚の分割速度と正常性の話です。

一般に、体外で胚を培養すると、体内での胚発育と比較して発育速度が遅くなるといわれています。しかし最近は、培養液の改良が進み全体的に胚の発育速度が速い傾向にあり、体内での発育速度にかなり追いついてきているのではないかと思います。

全体的には発育速度が速くなっているのですが、胚ごとにみると、速い胚と遅い胚があります。一般に、遅い胚は質が良くない胚といわれています。一方、速い胚の質が良いのか、または悪いのかは意見が分かれるところです。私の経験では、発育が速い胚は、どちらかというと「質が良い」という印象を持っています。

この疑問を実際に検証した研究を紹介します。今月発表されたばかりの論文です。

Pons, M. C., et al. (2019). “Deconstructing the myth of poor prognosis for fast-cleaving embryos on day 3. Is it time to change the consensus?” J Assist Reprod Genet.

発育の早い採卵3日目胚の発生能力を検討することを目的としました。

2014年7月から2017年6月の間に行われた異数性着床前診断513周期から得られた4028個の胚を対象に行った後ろ向き研究です。

その結果、採卵3日目に9-11細胞の胚は、8細胞の胚(標準的な発育速度)と比較して、正倍数性(つまり染色体正常)の胚の割合がやや低いことがわかりました。一方、採卵3日目に12細胞以上の胚は、8細胞の胚と比較して、正倍数性の胚の割合が同等であることがわかりました。

逆に、発育の遅い胚は、正倍数性の胚の割合が、著しく低いことがわかりました。

さらに、正倍数性の胚盤胞について、発育の速い胚由来と8細胞の胚由来を比較したところ、生児獲得率は同等でした。

採卵3日目に8細胞の胚、9-11細胞の胚、12細胞以上の胚の生児獲得率を比較したところ、有意な差はありませんでした。

結論は、「採卵3日目に12細胞以上の胚は、8細胞の胚と同等の発生能力があると考えられる」でした。

9-11細胞の胚には注意が必要ですが、私の経験的感触は、概ね間違っていないようです。採卵3日目に発育の速い胚ができた方は、とりあえず前向きに捉えてよいのではないでしょうか。

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