胚盤胞は栄養外胚葉の質が重要
幸町IVFクリニック院長 雀部です。
今回は、胚盤胞の評価の話です。
胚盤胞は、内細胞塊(将来胎児になる部分)と栄養外胚葉(将来胎盤になる部分)によって構成されています。この胚盤胞を評価する方法として、有名なのがガードナー分類です。胞胚腔の大きさによりグレード1から6、内細胞塊の細胞密度と細胞数によりAからC、栄養外胚葉の細胞密度と細胞数によりAからCに分類して評価します。詳しくは、こちらのサイトがわかりやすいので、ご覧ください。
このガードナー分類ですが、将来胎児になる部分ということで、内細胞塊の評価が最も重要と考えられてきました。ところが、最近の研究により、実は将来胎盤になる栄養外胚葉の質の方が、妊娠結果に重大な影響を及ぼしていることがわかってきました。
それでは、論文を紹介します。今月発表されたばかりです。
胚盤胞の形態的評価の指標と妊娠結果の関連を検証することを目的としました。
単一施設における後ろ向き研究です。
2012年1月~2018年2月、単一胚盤胞移植を実施した症例を対象としました。新鮮胚盤胞移植1023周期、凍結胚盤胞移植1222周期のうち、新鮮465例(45.1%)、凍結600例(48.5%)に単胎妊娠が成立し、分娩に至りました。
胚盤胞における胞胚腔の大きさ、内細胞塊の質、栄養外胚葉の質が妊娠率、生産率、早産率、妊娠週数に比して小さい児の率、大きい児の率に影響を及ぼしているかどうかを検討しました。
新鮮胚盤胞移植では、胞胚腔の大きさが大きくなるほど、妊娠率が上昇しましたが、凍結胚盤胞移植では、関係ありませんでした。
新鮮と凍結両方において、栄養外胚葉の質が良いほど、妊娠率が上昇しました。
新鮮と凍結両方において、胞胚腔の大きさが大きいほど、栄養外胚葉の質が良いほど、生産率が上昇しました。
内細胞塊の質は、妊娠結果に影響を及ぼしませんでした。それどころか、内細胞塊の評価が高い胚ほど、凍結において早産率が高いという驚きの結果が出ました。新鮮における早産率、新鮮と凍結における妊娠週数に比して小さい児、大きい児の率との関連はありませんでした。
結論として、妊娠率、生産率に影響する因子として、胞胚腔の大きさ、栄養外胚葉の質が重要であると述べられています。冷静に考えてみれば、着床期に活躍するのは主に将来胎盤になる栄養外胚葉なわけで、実は当然の結論なのかも知れません。
内細胞塊の評価が高いほど凍結胚盤胞移植において早産率が高くなるという驚きの結果については、そのメカニズムはよくわかっていません。
結論にもうひとつ重要なことが言及されていました。「胞胚腔の大きさ、内細胞塊の質、栄養外胚葉の質に関して評価の低い胚盤胞で妊娠したとしても、有害な妊娠結果(早産、妊娠週数に比して小さい児、大きい児)に結びついている可能性は低い」でした。
細かいことは置いといて、「胚盤胞は栄養外胚葉の質が重要」だけは覚えておいて下さい。
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