幸町IVFクリニック

院長

排卵誘発剤を使うと染色体異常胚が増える?

2019.10.10

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、排卵誘発剤の安全性についてです。

「排卵誘発剤を使うと卵子がたくさん取れるけど、染色体異常胚の割合も増えるのではないか」ということが以前より言われていました。以前は、これを検証するのは非常に難しかったのですが、近年は着床前診断の技術が普及したため(日本ではまだ臨床研究の段階です)、比較的簡単に調べることができます。

それでは、自然周期と刺激周期における異数体(染色体の数の異常)の発生率を比較した研究を紹介します。今月発表されたばかりの論文です。

Hong, K. H., et al. (2019). “Embryonic aneuploidy rates are equivalent in natural cycles and gonadotropin-stimulated cycles.” Fertil Steril 112(4): 670-676.

2013年4月~2015年8月に行われた、前向きの観察研究です。

排卵誘発剤を使用しない自然周期369周期における異数体の割合を、背景条件を揃えた刺激周期2846周期と比較しました。

胚は一旦凍結し、着床前異数体検査にて正常と診断された胚を、次周期以降に融解胚移植し、継続着床率を比較しました。

その結果、自然周期の異数体率は、刺激周期の異数体率を同等でした。自然周期の異数体率は、女性の年齢の上昇に伴い増加し、年齢ごとの異数体の分布は刺激周期と同等でした。

自然周期の染色体正常胚移植後の継続着床率は、刺激周期と比較して同等でした。

結論は、「胚の異数体率は、排卵誘発剤による卵巣刺激の影響を受けない」でした。

一部の専門家の影響で、「排卵誘発剤=悪」と考えている患者さんにめぐり会うことがあります。中には胚盤胞に到達しないなどの理由で自然周期の体外受精を延々とやり続けている方がいらっしゃいます。

そういう方は、思い切って排卵誘発剤を使って一般的な卵巣刺激をやってみると胚の質がグッと改善することがあります。ひとつのやり方でうまくいかない場合は、そのやり方に固執しないで他の方法を試してみることが重要です。

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