体外受精によって生まれてくる子どもの数
こんにちは、今回は培養室の原が担当させて頂きます。
先日、2019年に国内で行われた体外受精の治療実績について日本産科婦人科学会より発表されました。
↑1993年から2019年までの年別出生児数 日本産科婦人科学会より
約600の施設で45万8101件の治療が行われ、体外受精によって出生した子どもの数は6万598人で治療数、出生児数ともに過去最多を記録したそうです。
厚生労働省によると2019年の総出生児数は86万5239人なので、それを元に単純に計算をすると14人に1人の子どもが体外受精によって生まれていることになります。
1983年に国内で初めて体外受精による出生児が確認されてから2019年までに生まれた子どもの数は合わせて71万931人だそうです。
ちなみに調べたら71万人は47都道府県中、人口数45位の高知県の人口と同じくらいでした。(わかりにくい例え、、すみません)
上のグラフを見ると年々出生児数が増えていることがわかります。
しかし、2009年ごろから5-6年間のような急激な上昇は近年見られず、ほとんど横ばいとなっています。
また、年々FETによる出生児(グラフ内緑のバー)が占める割合が増えていますが、ICSI出生児数(赤のバー)とIVF出生児(青のバー)はほとんど横ばいになっていることが分かります。
ICSIとは精子を直接卵子に注入する顕微授精のことで、IVFとは同じお皿に精子と卵子を一緒に培養して受精をさせる一般的な体外受精のことを言います。
ICSI出生児とIVF出生児というのは採卵をして受精後、体外で何日か発育させたあと胚を凍結せず、同じ周期でそのまま胚移植をする新鮮胚移植によって生まれた子を指しています。
FETとは採卵をして受精した胚を一旦凍結して、次以降の周期で胚を融解し移植する技術のことです。
FET出生児が年々増えている理由として、まず1回の採卵で複数個の胚を凍結できることが多く複数回胚移植ができること、着床に適した状態で胚を子宮に移植することができ高い妊娠率が見込めることが考えられます。また胚の凍結融解技術が向上し、ほとんど胚がダメージを受けなくなったことなどが考えられます。
今回発表された治療成績をご覧になり、なんで2019年の情報が今頃?と思われるかもしれません。
おそらく2019年1月から12月分にスタートした治療についての情報を分娩の情報が出揃う翌年の2020年11月ごろに各施設から情報収集し、そのあと集計をするためだと考えられます。
体外受精を行っている医療施設は必ず日本産科婦人科学会に登録する必要があり、さらに様々な基準を満たすことで実際に不妊治療を行うことができています。
登録している施設は治療についての報告義務が課せられていて、全国から収集された情報によって学会はデータの解析を行うことができています。
それを医療従事者だけではなく一般の方にも情報を公表することで体外受精を検討されているご夫婦や治療中のご夫婦が参考にすることができます。
また、データ解析をすることで今後の体外受精の発展を目指しています。
当院ももちろん学会への施設登録を行っており、報告義務が課せられています。
そのため、妊娠されて分娩施設に転院されていく患者様には当院への分娩報告をお願いしております。
今回発表された2019年の治療に関しても全症例の報告をすることができました。
去年ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。
学会への報告の際には患者様のお名前など個人情報は一切報告しておりませんのでご安心ください。
そろそろ今年も2020年分の症例報告の締め切りが近づいてきました。
分娩調査票をまだ提出されていない方の場合、当院から連絡が来る可能性があります。
今年分娩された方はご協力よろしくお願いいたします。
今回発表された2019年のデータは日本産科婦人科学会のHPからご覧になれます。
日本産科婦人科学会HP: http://www.jsog.or.jp/
日本産科婦人科学会データブック: http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/
ひとりでも多くの方のよろこびに貢献できるよう、培養室一同日々努めてまいります。