レスキューICSI
今回は培養室の原が担当させて頂きます!
今年の4月より不妊治療の保険診療が始まり、約半年が過ぎました。
2022年3月まで、生殖補助医療は保険外診療、いわゆる自費診療でした。
もともと体外受精はその自由度を利用して今まで様々な技術が開発され、
発展してきました。
4月から保険適応化されましたが、
今までの治療の全てがそのまま保険化されたわけではありません。
保険診療可能なのは、具体的に・・
・卵巣刺激
・採卵
・体外受精
・顕微授精
・胚移植
・胚の凍結、融解
・黄体補充など・・
基本的な生殖補助医療のみ実施でき、
さらに発展的な治療は保険診療では行うことができません。
発展的な治療で例を挙げますと・・・
・精子DNA損傷検査
・レスキューICSI
・ZyMot(精子スパームセパレーター)
・PGT-A/SR
・PRP(多血小板血漿)を用いた治療
などがあります。
現時点ではこれらの治療をご希望の場合は自費となります。
これは全国共通です。
保険診療が始まってから保険診療について解説するホームページが多くなってますので、
今回は自費診療の内容についてお話したいと思います。
自費診療の中でも培養室が密に関係しているレスキューICSIについて
詳しく説明していきます。
まず、精子と授精させる方法は2通りあります。
- Conventional IVF(以下C-IVF)
卵子と精子を同じお皿に入れる方法で、精子が自力で卵子にたどりついて受精します。
- 顕微授精(以下ICSI)
卵子の中に一つの精子を人工的に直接注入し、受精の補助を行います。
実際に、どちらの授精法を選択するかというのは
過去の治療歴や体外受精当日の精子の所見によって決まります。
・運動性が良好、十分な量の精子が得られた
→自力で受精できる見込みが高くなるので、C-IVF
・運動性が低い、十分な量の精子が得られない
→受精に手を貸す必要があるので、ICSI
を選択することになります。
どちらの授精のさせ方も培養室ができるのは受精の補助というところまでで、
本当に受精が成立するためには卵子と精子が互いに
相互作用を起こすことが必要となります。
採卵当日に精液所見に問題がなく、通常のC-IVFを行ったにもかかわらず、
相互作用がうまくいかず受精しない場合があります。
そのような卵に対して追加で顕微授精を行うことをレスキューICSIといい、
受精できる機会をもう一度卵に与えることができる技術です。
C-IVFを行い、もし全く受精卵が得られない場合は
その後の治療が全て中止となってしまいます。
そのため、保険をかけるという意味でC-IVFとICSIを半分ずつ行う施設や、
精子の所見に関係なく最初から全症例でICSIを選択する施設もあるようです。
レスキューICSIは一度C-IVFを行っているため、
受精の判断を間違えてしまうと人工的に異常受精を招いてしまう危険性があります。
せっかくC-IVFにより正常に受精していたにも関わらず、
受精の判断を誤り、人工的に精子をもう一つ注入してしまったら、
その卵は異常受精となり、胚移植することができません。
そのため、十分な技術力や知識、特殊な機器が必要になる技術です。
当院では特殊な顕微鏡を用いて、臨床的に非常に安定した成績を維持しています。
レスキューICSIは
・できるなら自然な形で受精をさせたいという要望にも対応することができる
・次世代への影響を含めて過剰な医療を避けることができる
というメリットがあります。
今回の保険適応化によって、
どの病院でも同じ医療を同じコストで受けることができるように見えますが、
実際には病院による実力差は大きく残っています。
病院選びをする際は、しっかり見極めて頂く必要があるかと思います。
また、保険の範囲内では妊娠が難しく、
個別に対応しなくてはいけない症例に対しては
自費診療を病院側から提案される場合があります。
そのため、自費診療の内容が病院選びの1つの基準になると思います。
当院では自費診療の1つとして、レスキューICSIを行っています。
また、当院はPGT-A/SR認可施設ですので、実施可能です。
(PGT-Aは実施を認められている認可施設でないと実施できない治療です。)
他に保険で実施できない治療として挙げた
ZyMot(スパームセパレーター)については過去私が書いたブログ
→2020.1.8のブログ
PGT-Aについては大日方のブログ
→2021.11.11のブログ
などを参考にして頂くと、わかりやすいです。
当院のホームページでも
それぞれの治療について詳しく説明しておりますので、ご参考下さい。
また、当院では院長が月2回ほど土曜日にセミナーを行っております。
セミナーでは動画や写真を使って分かりやすく
それぞれの治療について説明しております。
ご興味のある方はぜひセミナーにご参加下さい。
当院ではひとりでも多くの方のよろこびに貢献できるよう、
スタッフ一同日々努めております。
監修医師紹介
幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊
医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。