アシステッドハッチング
こんにちは!培養室の堀井です!
今回は、胚移植の際に行う、アシステッドハッチング(Assisted Hatching: AH)についてお話ししたいと思います!
アシステッドハッチングは、日本語訳で “孵化促進法‘‘ といい、
孵化(Hatching)を促進、手助けをする(Assisted)技術です。
そもそも、孵化とは何かご存じでしょうか?
一番イメージしやすいのは、鳥の卵だと思います。
鳥は、卵を産み、胚が発育すると、卵の殻が割れ、雛が誕生しますよね。
これを孵化といいます。
孵化は鳥だけではなく、人間の胚でも起きていて、
妊娠が成立するための大切な条件の一つだといわれています。
人間の卵も鳥と同様に透明帯という殻が存在しており、
受精した胚は胚盤胞まで発育し、大きく膨らむことによって、自力で透明帯を破り、
雛のように中から脱出します。
孵化した胚盤胞は子宮内膜に着床し、妊娠が成立します。
しかし、体外受精を行った胚は、
体内とは違う環境で成長したり、凍結や融解処理を行ったりすることで、
透明帯が硬くなり、孵化しにくくなることがあるといわれています。
また、年齢が高くなってくると卵の質が衰えてしまい、透明帯が硬くなりやすいです。
透明帯が硬いために、胚移植をしても孵化不良が起きてしまい、
着床しない可能性があります・・・
特に、ART反復不成功の症例や、凍結融解胚移植の症例で孵化不良が起きている可能性があります。
そこで、胚移植の前にアシステッドハッチングで透明帯の処理を行うことによって、
孵化しやすくなるといわれています◎
アシステッドハッチングの技術には、
- 機械的方法
特別なピペットを用いて透明帯を穿刺し、透明帯の一部を切開する方法
- 化学的方法
酸性溶液を用いて、透明帯を溶解する方法
- レーザーを用いる方法
レーザーの照射によって、透明帯の処理を行う方法
の3種類があります。
また、透明帯の処理の仕方も、
・透明帯の周囲を一部処理 or 透明帯の全周囲を処理
・透明帯の厚さを薄くする処理 or 透明帯を完全に開口する処理
と複数あります。
アシステッドハッチングは、
これらの3種類の技術、透明帯の処理の仕方を組み合わせて行います。
当院では、③の方法で行っています。
③の方法は、簡便かつ精密に処理を行うことができます。
透明帯の処理の仕方は、アシステッドハッチング後も胚を操作しやすく、子宮内で胚盤胞が脱出しやすいように、透明帯の約1/10程度を完全に開口しています。
当院では、凍結融解胚移植の場合や、透明帯に明らかな変質を認められる場合に推奨しています。
現在、アシステッドハッチングは保険診療で実施可能となっており、患者様ごとに、適応の有無を検討しておすすめしています。
自費診療の方は、どなたでも実施可能です。
アシステッドハッチングが必要な場合には、医師から説明があります。
説明の際に、このお話を思い出していただけたら幸いです◎
ご不明な点がございましたら、説明時などにお尋ねください!