ART:高度生殖医療 保険で治療するには?
こんにちは。
今回の担当は培養室、大日方です。
ARTなどの不妊治療が保険適応となって
はや1年が経ちました。
保険適応によってARTを選択する患者さんの裾野が広がったように思います。
ですが、
みなさんご存知のように保険診療には自費診療にはない様々な制限があります。
その1つが“適応”です。
保険診療を行う際には、その治療を必要とする症状があることが前提です。
例えば、内科の病院に受診する場合、
咳、鼻水、発熱などの症状がないのに、
“風邪のような気がする・・”
といっただけでは保険での診療・投薬はできません。
ARTにおいても例外ではなく、
保険診療にてARTの治療を行うには、
それの対象となる症状=適応(理由)が必要となります。
日本産婦人科学会のガイドラインによると
ARTの対象となるのは、
ART以外の治療によって妊娠の可能性がないか極めて低いと判断される、
および
ARTを実施することが、その治療の被実施者(患者さん)またはその出生児に有益であると判断される場合
と規定されています。
具体的なIVF(体外受精)の適応として
卵管性不妊症、
男性不妊症、
免疫性不妊症、
原因不明不妊症
とあります。
すこし説明しますと、
卵管性不妊症(両側卵管閉塞)
卵管には卵巣から排卵された卵子をピックアップする、受精の場となる、受精した胚を育てながら子宮まで運ぶ、などの役割があります。卵管は通常左右2本ありますが、2本ともに通過性がない場合は自然妊娠や一般不妊治療での妊娠は難しくなります。
男性不妊症
精液検査で精子の数が少ないと診断された場合も、自然妊娠や一般不妊治療での妊娠は難しくなります。また、精子の運動性が弱い場合や男性の体内に抗精子抗体(後述)が存在する場合にもARTの対象となることがあります。
さらに、IVFによる受精障害、精巣精子または精巣上体精子を用いる場合、検査の所見によってIVFでの受精が困難であろうと判断された場合はICSI(顕微授精)の適応となります。
免疫性不妊症
女性の体内に精子と結びついてその運動性や受精能力を障害する抗精子抗体が存在する場合です。
また、女性の体内に抗卵子抗体が存在すると、胚の発育が障害されることがあります。
原因不明不妊症
妊娠に関わる実施可能な検査では明確な異常が発見されないにもかかわらず、一般不妊治療(タイミング法・人工授精法)を一定期間行っても妊娠に至らなかった場合です。
上記のほかに、排卵障害や子宮内膜症の有無・卵巣機能・卵巣予備能・年齢因子など、様々な要素を総合的に評価してARTを行う適応があるかを判断します。
そのため、他院での不妊治療の既往がある方が
当院にて保険でのARTをご希望の場合は、
今までの治療経過を確認するため、紹介状の持参をお願いしています。
保険が導入されたことで、以前よりもARTが受けやすくなったとはいえ、
治療に対する不安は、まだあるかと思います。
当院では月に2回、体外受精セミナーを開催しています。
ARTの治療の流れや、当院の特色など
院長が直接お話しています。
質問などもお受けしていますので、
ぜひご参加ください。
季節の変わり目、
体調を崩さぬようお過ごしください。
では、また。
監修医師紹介

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊
医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。