幸町IVFクリニック

培養室

胚の評価

2017.06.27

こんにちは。培養室の大日方です。

今回は胚の評価法についてのお話です。

 

 

胚のグレード、みなさん気になりますよね?

胚の評価は胚を顕微鏡で観察して、その形態で判断をすることが主になります。

 

評価法はいくつかありますが、代表的な2つの分類をご紹介します。

 

 

 

1つ目はVeek(ヴィーク)の分類

この方法は体外受精の治療を経験した方なら1度は目にしたことがあると思います。

グレード○(G○)と表記してある、それです。

胚は受精したあと分割していきますが、その分割後の形態を評価する方法です。

 

この方法は

  • 胚の分割の均一性
  • フラグメンテーションの有無/量

によって評価されます。

※フラグメンテーション:胚が分割するときに胚自身から出る細胞のゴミのようなもの

 

Grade1:胚の分割が均一でフラグメンテーションがない

Grade2:胚の分割が均一だけれどフラグメンテーションが少しある

Grade3:胚の分割が不均一

Grade4:胚の分割が均一または不均一で、フラグメンテーションがかなりある

Grade5:胚の細胞がほとんどなく、フラグメンテーションがたくさんある

 

といった具合です。

 

 

 

2つ目はGardner(ガードナー)の分類

こちらも有名ですね。

胚が分割期を越えて、胚盤胞になったときにその胚盤胞を評価する方法です。

この方法は細かく説明すると長くなるので・・・

 

簡単にいうと、

  • 胚盤胞の発育段階でステージ1-6に分類
  • 胚盤胞の細胞の数と密度によってABCで分類

ABCは内細胞塊(赤ちゃんになる部分)と栄養外胚葉(胎盤になる部分)それぞれを評価するので2つ付きます。胚盤胞まで発育した胚で内細胞塊も栄養外胚葉も細胞が密であれば胚盤胞3AAといった表記になります。

 

 

 

ですが、これらの分類だけでは胚の質全てを表しているとはいえません!

 

まず、これらの分類では胚の発育スピードを加味していません。

 

たとえば、採卵3日目で

  • 4細胞グレード1
  • 8細胞グレード3

ではどちらが良好胚でしょうか?

 

 

答えは②となります。

採卵3日目だと順調に発育した胚ならば8細胞に発育しているものがほとんどなので、いくらきれいに分割をした4細胞でも発育が遅い印象になり、良好胚とは評価し難くなります。

 

また、胚も生きた細胞なので、均一に分割するのはなかなか難しい!

それに観察したその時にまだ分割が完了しなかった場合など細胞数が奇数個になると均等分割ではなくなります。

でも均一な分割でないとグレード1には分類できないので、どうしてもグレード3に分類します。

グレード3というと評価としては真ん中なのであまり良い印象ではないかもしれません。実際に胚移植の時、胚のご説明させてもらうとたまに

グレード3は良くない胚ですか?とご質問を受けます。

施設によってグレードの評価には差があるとは思いますが、グレード3はフラグメントが少ない胚なので当院では良好胚に分類されることが多くみられます。

 

 

 

胚の評価をする方法は、ほかにも胚の代謝産物を測定して胚を評価する方法、分割期胚の一部を採取して実際に検査をする方法などがありますが、機材が高価だったり、胚への負担が重い、日本では認められていないなどの問題で日々の治療に役立てるのはまだ現実的ではありません。

 

 

 

当院でもこれら胚形態の分類法をもとに胚を評価していますが、それに加えてタイムラプスビデオを取り入れています。

タイムラプスビデオでは胚を培養器に入れたまま定期的に写真撮影をして胚が発育していく様子を動画で確認できます。

一見正常に分割したように思われる胚でも、タイムラプスビデオで見返してみることで分割過程が異常な胚を見つけることができます。

このように様々な状況を総合的に判断して患者さんには良好胚・中等胚・不良胚という形でご報告しています。

 

タイムラプスビデオの画像は当院の体外受精説明会でも見ていただくことができますので興味のある方はぜひご参加ください。

 

 

 

いかにして一番の良好胚を見極めて胚移植するか!は培養士にとっても永遠の課題です。学会でも頻繁に意見交換がなされていますし、技術も日々進歩していますので、私たちも日々勉強です!

 

 

培養室では胚に負担がかからないよう、大切にお預かりしていますが

良好胚を得るにはやはり卵巣で育てる過程が一番重要です。

これから暑い日がやってきますが、冷房で身体を冷やさないよう体調に気を付けて乗り切りましょう!

 

ではまた。

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