凍結胚移植の割合が多いのはなぜか?
こんにちは。
培養室に大日方です。
年末年始は実家にも帰らず出かけることもなく、
家でまったり過ごしていました♪
さて、
私たち培養室のスタッフは患者さんと接することがあまり多くはないのですが、
数少ない患者さんにお会いできる機会として、体外受精セミナーの質問コーナーがあります。
当院の体外受精セミナーは現在、院長がお話するかたちとなっていますが、そのセミナーの終盤、院長が質問をお受けした後に大勢の前では質問しにくいな・・・というものを個別に伺うということを私たち培養士が請け負っております。
そのセミナーの院長への質問の中で何度か同じ話題が出ていて印象に残ったのでご紹介します。
それは・・
凍結胚移植の割合が多いのはなぜか?
です。
日本産婦人科学会HPより
こちらは、セミナーの中でも登場する日本産婦人科学会が公表しているグラフです。
高度生殖医療によって出生した児がどの治療によるものなのか、その割合を表しています。
青:体外受精-新鮮胚移植
赤:顕微授精-新鮮胚移植
緑:凍結-融解胚移植
※凍結-融解胚移植には体外受精由来胚も顕微授精由来胚も両方含まれています。
このグラフを見るとなるほど!
新鮮胚移植に比べて凍結融解胚移植の割合が多い!!
気になりますね。
当院でも胚移植の多くは凍結融解胚移植となっています。
グラフを見てもその割合は近年、顕著に増加しています。
それはなぜなのか?
要因は様々あると思われますが、
院長がご説明しているのは主に2点です。
- 採卵周期は必ずしも胚移植に適しているとは言えないこと
新鮮胚移植には採卵したその周期に胚移植を行います。
しかし、採卵周期はあくまでも採卵のための周期です。いかに良質な卵子を育てるかに重点が置かれます。これは、胚移植に適した環境とは異なってしまうことが多くみられます。
例えば、飲み薬の排卵誘発剤であるクロミッド(クロミフェン)は子宮内膜が薄くなってしまうことがあります。また、注射を使用した排卵誘発では卵巣の反応性が良過ぎると、卵巣が腫れてしまい卵巣過剰刺激症候群の危険性が高くなります。
- 胚移植だけのために周期を整えることができる
凍結融解胚移植周期では、①のような状況をリセットしてあらためて周期をスタートします。
胚移植のための子宮環境を作ることに専念することができます。
それと!!
培養士の立場からすると、近年凍結融解胚移植が増加しているのは
なんといっても 胚の凍結融解技術の向上
は外せません!
以前このブログの中でもお話させていただいたことがありますが、十数年前あたりに胚の凍結融解技術の大きな変革がありました。
急速ガラス化凍結法です。(技術の開発はもっと以前ですが、普及し始めたのはこの頃です)
この方法によって、凍結融解胚の生存率(胚を凍結-融解したときに壊れてしまうことなく融解される割合)が飛躍的に向上しました。
・・・残念ながら100%とは言えませんが、当院の胚損壊による胚移植キャンセル率は2%程度です。
生存率が高いということは、胚を凍結するという選択をしやすくなったということです。
例えば、得られた受精卵が1個だった場合、
凍結-融解して壊れてしまうリスクと子宮の環境を天秤にかけた時、
壊れてしまうリスクの方が大きければ当然新鮮胚移植を選択することになります。
実際、十数年前まではそうでした。
しかし、その子宮の環境はほんとうに妊娠に適していると言えるのか・・・??
このように今まで二の次にせざるを得なかった胚移植のための環境作りをしやすくなりました。
それは、妊娠率の向上にも寄与しているのではないでしょうか。
患者さんに立場からすると、
より早く採卵して胚移植をしてより早く妊娠したいという気持ちは当然だと思います。
ですが焦りすぎてしまって、かえって妊娠から遠のいている?!
といった状況なっていることもあるのです。それではもったいない!
患者さんの状況・胚の状況はそれぞれなので、新鮮胚移植を選択することももちろんあります。
実際には、その時の状況をみて患者さんの希望も加味したうえで医師と相談して選択することとなります。
どんな先生か気になる!
という方はぜひ当院の体外受精セミナーにご参加ください。
開催場所は当院の待合室、費用は無料ですので、
病院内や医師の雰囲気を受診される前に感じていただけると思います。
当院の治療の特色なども動画を使って詳しくご説明しています。
ついでに、培養士の雰囲気も少しでも感じていただけたら嬉しいです。
参加のお申込みは電話にてお受けしています。
受診を悩んでいる方も遠慮なくご参加ください。
まだまだ寒い日が続きますが、お身体冷やさないよう暖かくして過ごしてくださいね。
ではまた。