体外受精での受精法の選択とレスキューICSI
こんにちは!培養室の前川です!
今回は、当院での体外受精における受精法の選択と
レスキューICSIについてお話ししたいと思います。
実は以前にも同じ内容を取り上げたのですが、説明会などでも
よくご質問を頂くことが多いので、また改めて書きたいと思います。
体外受精における受精法には、
体外受精(c-IVF)と顕微授精(ICSI)、ふたつの受精法があります。
体外受精(c-IVF)は、卵子と精子を同じ培養液に入れて培養する方法で、
精子が自力で卵子にたどり着いて受精をします。
顕微授精(ICSI)は、細い針を使い、直接精子を卵子に注入します。
皆さんがどちらの受精法を用いるのかは、採卵当日の精子の状態によって決まります。
採卵当日に皆さんからお預かりした精液は、洗浄をして、運動性や形態が良好な精子を
選りすぐるための処理を行います。特殊な試薬を使って良好な成熟精子をふるい分け、
さらにswim up法という方法を使って運動性が良好な精子のみを回収します。
この処理の結果、一定の精子数と運動率が得られた場合に精子の状態が良好と判定され
c-IVFの適応となります。
逆に、数や運動率が基準に満たない場合は不良と判断し、ICSIの適応となります。
また、もともとの精液所見が著しく不良の場合には、swim up法の処理ができないことがあり
ICSI適応になります。
ここまでが、受精法の選択のお話です。
次に、当院で行っているレスキューICSIについてです。
レスキューICSIとは、c-IVFを行って受精が成立しなかった場合に、追加で顕微授精を
行うことを言います。これにより、c-IVFでは受精できなかった時、未受精のまま
終わることを防ぐことができます。
当院の場合、c-IVFを行った後、当日のうちに受精の確認を行っています。
その結果、受精の反応が進んでいない可能性が高いと判断された卵子に対して、
その時点でレスキューICSIを行っています。この受精の確認ですが、卵子に極体という
構造物が2つ確認できることによって判断します。ただ、この極体の判別が難しい卵子も
少なくありません。そこで当院では卵子の紡錘体という構造体を観察できる
特別な顕微鏡を使い、受精の判定をより精密に行っています。
この紡錘体の動向を観察することによって詳しく受精の状況を知ることが出来ます。
もちろんレスキューICSIを行ったからといって必ず全てが正常受精するとは限りませんが、
このように採卵当日の受精の確認を精密に行い、その日のうちにレスキューICSIを行う
ことで、当院では最初から顕微授精を行った時と同程度の受精率や妊娠率を維持しています。
c-IVFでは、一見問題が無さそうでも何らかの原因により受精しないことがあります。
妊娠の可能性のある卵、精子であるにも関わらず受精しなかった卵に対して、
レスキューICSIはもう一度受精できる機会を与えることができます。
当院では、経験から得られた最適な方法と特別な顕微鏡を用いることで
c-IVFとレスキューICSIを組み合わせて行い、より精度の高い体外受精を行っています。