幸町IVFクリニック

院長

卵巣にも効く多血小板血漿

2020.06.11

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回も多血小板血漿(PRP)の話題です。

前の記事でも解説したとおり、多血小板血漿には多くの成長因子が含まれています。そこで、卵巣予備能が低下している女性の卵巣に多血小板血漿を注入したら、成長因子によって卵巣予備能が改善するのではないかと考え、調べてみたらすでに論文化されていました。皆、考えることは同じですね。

【参考記事】

子宮内膜が薄い方に朗報

当院ホームページの解説

 

Melo, P., et al. (2020). “The use of autologous platelet-rich plasma (PRP) versus no intervention in women with low ovarian reserve undergoing fertility treatment: a non-randomized interventional study.” J Assist Reprod Genet: 10.1007/s10815-10020-01710-z.

目的:体外受精を予定している卵巣予備能低下女性に対して、自己血から作成した多血小板血漿を卵巣内に注入する治療を3周期行い、その効果を検証すること

研究デザイン:非ランダム化前向き研究

対象:83人の女性。46人は多血小板血漿治療を受けた治療群、37人は治療を行わなかったコントロール群。平均年齢は41歳。

主要評価項目:治療前後のFSH(FSHというホルモンの基礎値)、AMH(抗ミュラー管ホルモン)、AFC(胞状卵胞数)

(解説)FSH、AMH、AFCは卵巣予備能の評価に用いられる指標です。

副次評価項目:採卵数、受精率、生化学的妊娠率、臨床的妊娠率、流産率、生産率

結果:治療群において、治療の前後のFSH、AMH、AFCの有意な改善が認められた。コントロール群では、FSH、AMH、AFCの変化は認められなかった。コントロール群と比較して治療群の生化学的妊娠率、臨床的妊娠率は、有意に高かった(生化学的妊娠率26.1% vs. 5.4%、臨床的妊娠率23.9% vs 5.4%)が、流産率、生産率は、有意差を認めなかった。

結論:卵巣への多血小板血漿注入は、卵巣予備能の指標を改善させる。妊娠結果の改善に結びつくかどうかの評価については、さらなるエビデンスが必要である。

この論文のデータをみる限りでは、効果がありそうなアプローチです。近い将来、エビデンスレベルが上がって臨床応用されたら、恩恵を受ける女性は非常に多いと思います。今後の動向から目が離せません。

(現在、婦人科領域で行われている多血小板血漿を用いた治療は、子宮腔内への注入のみです。多血小板血漿の卵巣への注入は、日本国内ではまだ行われていません。)

ご相談・初診のご予約はお気軽にContact