子宮内膜が薄い方に朗報
幸町IVFクリニック院長の雀部です。
すでにお気づきと思いますが、6月1日から当院のホームページが新しくなりました。しばらくブログをさぼっていましたが、この機会に心機一転、またがんばって皆様に役立つ情報を届けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私のブログでは、私が普段読んでいる医学論文の中から、皆様に興味を持ってもらえそうな内容の論文を選んでわかりやすく紹介していきます。
今回は、多血小板血漿(PRP)の話題です。
多血小板血漿(PRP)とは、文字通り血小板を多く含んだ血漿です。血小板には、多くの成長因子が含まれており、その成長因子には組織を修復する能力があります。よって、多血小板血漿(PRP)は、我々が本来持っている組織修復能力を最大限に高めた血漿ということができます。皮膚科、歯科、整形外科などの領域では、すでに多くの臨床経験が蓄積されています。
婦人科領域で初めて多血小板血漿(PRP)療法が応用されたのが、子宮内膜です。様々な理由により、どうしても子宮内膜が厚くならず、それが原因で反復着床不全状態に陥っている方がいらっしゃいます。そのような患者さんに対して、子宮腔内に多血小板血漿(PRP)を注入して、子宮内膜の増殖を助けようという発想で始まりました。
凍結融解胚移植周期において子宮内膜が薄い患者さんに対して、自己血から作成した多血小板血漿(PRP)投与が有効かどうかを検証した論文です。
対象:過去にホルモン補充による凍結融解胚移植周期において、子宮内膜が薄い(7mm未満)ために周期がキャンセルになったことのある患者さん64名です。34名は多血小板血漿(PRP)投与を行うPRP治療群、残りの30名はコントロール群としました。
研究デザイン:前向きコホート研究
結果:子宮内膜厚は、PRP治療群7.65±0.22mm、コントロール群6.52±0.31mm(統計学的有意差有り)
治療のキャンセル率は、PRP治療群19.05%、コントロール群41.18%(統計学的有意差有り)
着床率は、PRP治療群27.94%、コントロール群11.67%(統計学的有意差有り)
臨床的妊娠率は、PRP治療群44.12%、コントロール群20%(統計学的有意差有り)
結論:多血小板血漿(PRP)投与は、凍結融解胚移植周期において子宮内膜が薄い患者さんの子宮内膜増殖を促進し、着床率と臨床的妊娠率を改善する効果がある。
この研究のデータを見る限りでは、非常に効果がありそうな治療です。しかし、この治療はまだ始まったばかりで、エビデンスレベルとしてはまだ低い状態です。今後の動向を注意深く見守る必要があります。
当院でも、今年の4月から多血小板血漿(PRP)療法を開始予定でしたが、コロナ騒動のため開始が延期になり、6月より治療を受け付けております。ご希望の方は、ご相談ください。
【当院ホームページにも説明が載っていますので参照してください】