幸町IVFクリニック

院長

凍結胚の劣化リスク②

2024.11.21

幸町IVFクリニック院長の雀部です。

医学は絶えず発展しています。生殖医学の分野でも新しい知見が続々と発表され、疾患や治療に対する考え方は常に変化しています。このブログでは、妊娠を希望されているご夫婦向けに、新しく発表された知見のポイントをQ&A形式で簡潔に紹介していきます。

今回は、再び凍結胚の劣化リスクの話です。

Q 胚の長期凍結保存による劣化リスクはないのか?

A 胚の凍結保存期間は臨床成績に影響を及ぼしません。

根拠となる論文は・・・

Cobo, A., et al. (2024). “Embryo long-term storage does not affect assisted reproductive technologies outcome: analysis of 58,001 vitrified blastocysts over 11 years.” Am J Obstet Gynecol 231(2): 238 e231-238 e211.

論文のエビデンスレベルは・・・

後方視研究ですが、サンプルサイズが十分大きく、比較的信頼性の高い論文だと思います。

 

前回のブログで紹介した論文と正反対の結論です。2つの論文は、両方とも今年発表された最新、かつ権威のあるジャーナルに掲載された論文です。「で、どっちが正しいの?」という話になりそうですが、現時点ではどちらも正しい可能性があります。つまり、主張が対立していて結論が出ていない状態です。そのような状況下で、治療を受ける患者さんの立場では、どのように考えればよいのか?これは、各々の考え方に依ります。私なら、どちらに転がってもいいように、自衛的に胚の凍結保存は5年以内に留めると思います。

監修医師紹介

院長 雀部 豊

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊

医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。

※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。

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