女性のからだと血糖
こんにちは、検査技師の佐藤です。
今回は【女性のからだと血糖】について。
月経が毎月のように周期的に起こるのはエストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンが主に関係しており、これらの女性ホルモンはインスリンの作用効果にも影響を与えています。
インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種で、糖の代謝を調節し血糖値を下げる働きを持っています。
エストロゲンはこのインスリンの作用効果を高める働きをして血糖値の上昇を抑制し、プロゲステロンはインスリンの効きを悪くし血糖値を上昇させる働きがあると言われています。
つまり、月経終了後のエストロゲンが上昇して卵胞が育つ卵胞期の血糖値は低めになりますが、排卵後のプロゲステロンが上昇する黄体期になると血糖値が上昇しやすくなります。
血糖値が食事の前後で大きく変動するというのはよく知られていることですが、実はこのように空腹時にも絶えず変動しているのです。
皆さんは月経前になると食欲が強まりつい食べ過ぎてしまう、甘い物が食べたくなるといった経験はありませんか。
これは黄体期でインスリンの作用が弱まることで血糖値が上がりやすくなり、すると今度はインスリンが過剰に分泌され血糖値が通常よりも早く下がるために、空腹を感じやすくなったり、甘い物が食べたくなったりすると考えられています。
ダイエットが月経終了後の卵胞期が適しているというのも、黄体期のイライラや浮腫み、過食しやすい時期よりも、代謝が活発になり自律神経が安定する卵胞期の方がより効果が出やすいからであると言えるでしょう。
不妊症や月経不順の原因の一つに多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があります。
PCOSとは、卵巣で通常よりも多く男性ホルモンが作られてしまうことで排卵がしにくくなる疾患です。通常、排卵は卵巣内のひとつの卵胞が大きくなり起こります。PCOSとなった卵巣内には小さな卵胞がたくさんあり、ひとつの卵胞が大きくなれずに排卵がうまくいかなくなることで排卵障害が起こります。排卵がうまくいかないと、月経不順や無月経となり、不妊症の原因となります。
PCOSの人の約50~80%にインスリン抵抗性が認められると言われています。
インスリン抵抗性とは、インスリンの分泌量は十分に保たれていても、インスリンを筋肉などの細胞へ送り込めずインスリンの作用効果が十分に得られない場合を言います。
また、インスリン抵抗性があると男性ホルモンが増加し、男性ホルモンは卵胞の発育を抑制するため、卵胞発育抑制や卵質の低下、排卵障害の原因となる可能性があります。
(PCOSについて詳しく書いてあるブログもありますので是非ご覧ください)
このように、女性のからだやホルモンと血糖はとても深い関係があることが分かります。
エストロゲンの減少は加齢とともに加速していきます。すべての女性は、40歳以降空腹時血糖値が増加し、代謝が落ちて脂肪を溜め込みやすい体になります。
更年期に糖尿病の発症リスクが上昇する理由はこのようなことが関連しているのです。
今まで健康に問題がなかった人でも、糖尿病になるリスクが上がるため、食事や運動には気をつけていきたいですね。
それでは、今年も余日僅かとなりました。
皆さまどうぞよいお年をお迎えください。
監修医師紹介
幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊
医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。