多嚢胞性卵巣症候群について
培養室の堀井です!
先日、名古屋で行われた生殖医療学会に参加してきました!
名古屋は通っただけで降りたことがなかったのですが、おいしいごはんが多くていい街でした…( *´艸`)
とはいえ、おいしいごはんを食べてきただけではありません(笑)
ちゃんと学会に参加してたくさん学んできました!
学会での内容をこの場でお話はできないので、今回のブログでは、学会の演題として取り上げられていた多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome: PCOS)についてお話していきたいと思います!
多嚢胞性卵巣症候群は生殖年齢女性の5〜8%で発症し、卵巣が多くの小さな卵胞ばかりになってしまう「多嚢胞性卵巣」と呼ばれる状態になってしまう疾患です。
多嚢胞性卵巣にある卵胞は、ネックレスサインという、卵巣を取り囲むように位置していることが多く見られます。
この状況になってしまうと、排卵が難しくなり、妊娠しづらくなります。
そのため、この疾患は、不妊原因の1つとして問題視されていますが、その病態については未だに解明されていません。
多嚢胞性卵巣
現在考えられている多嚢胞性卵巣症候群の原因は、インスリン抵抗性と高アンドロゲン血症を中心に、全体のホルモンバランスが崩れてしまうことだと言われています。
インスリンは血糖を下げるホルモンです。
しかし、インスリン抵抗性という、インスリンの働きが機能しにくい状態になると、体は「インスリンの量が足りない!」と判断し、過剰に分泌してしまいます。
インスリンにはアンドロゲンを産生する作用もある為、同時にアンドロゲンの量も増加し、いわゆる、高アンドロゲン血症という状態になってしまいます。
アンドロゲンは男性ホルモンの一つで、女性の体内に一定量存在し、卵胞を育てるのに重要な役割を果たしています。
しかし、アンドロゲンが過剰に分泌されてしまうと、逆に卵胞の発育に悪影響を与えたり、男性化と呼ばれる症状が出てきます。
男性化とは、「ニキビができやすい」「体毛が濃い・増える、または脱毛」「声が低くなる」といった男性に多い症状が、女性で見られるようになることです。
また、アンドロゲンが過剰に分泌してしまうことによって、黄体形成ホルモン(LH)のホルモンバランスも崩れ、排卵障害が生じてしまいます。
その結果、卵巣は多嚢胞性卵巣となり、排卵が難しく、場合によっては排卵していないこともあります。
排卵がきちんと起きていないと、卵子は卵巣にとどまったままになるため、精子とは出会うことが出来ず、受精、妊娠することが出来ません。
また、卵胞もそのまま卵巣に残っているため、より多嚢胞性卵巣になってしまい、悪循環に陥ってしまいます。
このような状態になってしまうと、月経周期は乱れ、排卵しているタイミングが読みにくく、より妊娠しづらくなります。
そもそも、正常な月経周期は何日くらいかご存じでしょうか?
日本産婦人科学会で定められている正常な周期は25~38日で、周期ごとの変動は6日以内とされています。
それ以上月経周期が長い場合は、多嚢胞性卵巣症候群やその他の病気になっている可能性が高く、自然妊娠が難しくなってしまいます。
しかし、正直なところ、「ニキビができるって誰にでもあることだし、月経周期の乱れもまあ多少なら別にいいか…」って思ってしまう方いらっしゃいませんか…?(;^ω^)
多嚢胞性卵巣症候群は、そのままにしてしまうと、卵巣だけでなく、健康面や子宮にも悪影響を与えてしまい、また違う病気になりやすくなります。
そのため、今回お話した症状がいくつか当てはまった方は、そのままにせずに、産婦人科、婦人科へご相談ください!
この疾患の完全な治療法はありませんが、インスリン抵抗性が強い方でしたら、生活習慣を整えることで改善する場合があります。
それでも改善しない場合、妊娠の希望がない患者様は、低用量ピルなどの薬を使って、月経周期の乱れを整え、消退出血(女性ホルモンを調整し、子宮内膜を剥がして、排出させること)を定期的に起こすようにします。
妊娠の希望がある患者様は、薬を使って排卵を誘発させ、タイミング指導や人工授精、場合によっては体外受精を行い、妊娠のお手伝いをすることが出来ます。
当院は、妊活で必要な検査を東京都からの助成金で受けることができる「TOKYO プレコンセプションケア」の登録医療機関となっています。
この検査の内容で多嚢胞性卵巣症候群かどうか調べることもできますし、その他の病気が見つかる場合があります。
気になった方はお気軽にお尋ねください!!