体外受精で出生した子供の数 ついに「8-9人に1人」に
こんにちは、培養室の原です。
以前、このブログで「体外受精によって生まれてくる子どもの数」というタイトルで、2019年のデータについてお話ししました。昨年末、日本産科婦人科学会より2023年の最新データが発表されましたので、改めて共有させていただきます。
(「なぜ3年も前のデータが最新なの?」と思われるかもしれません。これは、2023年1月~12月に治療を開始した方が全員出産を終えるのが、翌2024年10月ごろ。その後、全国の施設からデータを集計・精査して公表されるまでに時間がかかるためだと考えられます。)
以前のブログについて↓
体外受精によって生まれてくる子どもの数 | 幸町IVFクリニック
URL→https://www.saiwaicho.com/lab/2103/

↑2001年から2023年までの年別出生児数 日本産科婦人科学会より
- 出生児数は過去最多を更新
グラフを見ると一目瞭然ですが、体外受精による出生児数は年々、右肩上がりを続けています。
・2023年の体外受精による出生児数:
8万5048人(2019年は約6万598人でした)
・総出生児数に対する割合:
8.6人に1人(2019年は14人に1人でした)
※2023年の総出生児数72万7277人から算出されています。
・1983年~2023年までの累計体外受精出生児数:
約100万3360人(2019年時点では71万931人でした)
2019年は「14人に1人」だった割合が、ついに10人を切り、「8.6人に1人」となりました。小学校の1クラスを30〜40人と想定すると、クラスに3〜4人は体外受精で生まれた子がいる計算になります。約10年前はクラスに1~2人、約5年前では2〜3人という状況でしたが、今や体外受精はますます身近な存在となっています。
累計出生時数は1983年に国内で初めて体外受精によるお子さんが誕生してから、2023年までに100万人となりました。2019年時点では約71万人で、前回のブログでは「高知県の人口と同じくらい」と例えましたが、100万人となると、仙台市や千葉市といった政令指定都市の人口に匹敵する規模となります。
- 「FET(凍結融解胚移植)」が主流の時代
2019年のブログでもお伝えしましたが、2023年もFET(凍結融解胚移植)による出生児数が圧倒的な割合を占めています。以前は採卵した周期に胚を戻す「新鮮胚移植」も一般的でしたが、現在は一度胚を凍結し、万全に整えた子宮環境へ戻す「FET」が不妊治療の主流となっています。
FETによる出生児が年々増えている背景には、以下の理由が考えられます。
- 1回の採卵から複数回の移植が可能:
1回の採卵で複数個の胚を凍結できることが多いため、一度の採卵から複数回の移植に繋げることができます。
2. 着床に最適な環境づくり:
採卵周期は排卵誘発剤の影響でホルモンバランスが乱れやすく、内膜が薄くなるなど着床に適さない場合があります。FETでは、ホルモン状態をリセットし、内膜を着床に最適な状態に整えてから移植できるため、高い妊娠率が期待できます。
- 安全性の向上(OHSS回避)
多くの卵子が育った際に起こるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがある場合、一旦胚凍結して体調の回復を待つことで、母体の安全を優先した治療が行えます。
※卵巣過剰刺激症候群は過剰に卵巣が刺激されることで起こる病気で、重症化すると腎不全や血栓症などの合併症を引き起こすリスクがあります。
- 凍結技術の向上:
凍結・融解技術の進歩により、胚が受けるダメージが極めて小さくなりました。
- 背景と今後の展望
こうした増加の背景には、2020年に新型コロナウイルスの流行による受診控えや妊娠制限の影響で出生時数が翌年以降に微増したという経緯があります。さらに、2022年からの保険適用によって治療への経済的なハードルが下がり、若い世代の受診が大きく増えたことが決定的な要因と考えられています。一方で、出産適齢期の女性人口そのものが減少しているため、この増加傾向がいつまで続くかは注視していく必要があります。
- 分娩調査票のご協力ありがとうございました
当院におきましても、昨年末に2024年度分の実績報告を無事に終えることができました。今回の報告を含めた全国データは、今年の9月ごろに発表される予定です。
分娩調査票にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。皆様のご協力が、こうした貴重な全国データの一部となっています。
これからもお一人おひとりの「よろこび」に貢献できるよう、培養室一同、精一杯努めてまいります。
監修医師紹介
幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊
医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。
