葉酸について
今回は、「葉酸」についてお話させていただきます。
葉酸はDNA合成に必要な水溶性ビタミンであり、妊娠初期の児の発育(盛んな細胞分裂)には欠かせない栄養素です。
日本産婦人科学会の産婦人科診療ガイドに、妊娠希望の女性は、1日400μg(0.4mg)摂取する事が望ましいとされています。
神経管閉鎖障害とは、先天性の脳や脊柱に発生する癒合不全の事をいい、無脳症(神経管頭方部の閉鎖不全)、脳瘤(神経管の閉鎖不全によって頭蓋骨に欠損を生じ頭蓋内容の一部が頭蓋外で脱出して嚢胞を形成したもの)、二分脊椎(神経管閉鎖不全が脊髄の範囲に限局した形成不全)等が含まれます。
葉酸を摂取する事で児の神経管閉鎖障害を予防する目的もあり、当院では、葉酸を摂取して頂くよう、ご説明しています。
ご説明している中で、患者様から、葉酸を多く含む食材は何ですか?とご質問がありました。
多く含む食材は、ほうれん草などの葉もの野菜や果物・納豆等の豆類・レバーに多く含まれています。
しかし、葉酸は、水溶性ビタミンの一種で、必要量摂取しても尿の中に溶けて排出されるビタミンの為、毎日摂取する必要があります。
さらに、食品中に含まれている葉酸は、消化吸収過程で、活性を失う事も多いです。熱に弱いので、調理法に気をつけなければなりません。
特に食材を長時間水に浸ける、茹でる、煮るといった調理法では、葉酸が失われるリスクが高まります。この為、加熱時間を短くする、電子レンジを使う、または、炒める・揚げるといった調理法を選ぶ事で、葉酸の損失を抑える事ができます。
また、食品中の葉酸と栄養補助食品(サプリ等)の葉酸の体内利用効率について差があり、栄養補助食品の葉酸は生体内の利用率が85%と見積もられているのに対して、食品中の葉酸は、代謝過程に様々な段階がある為、利用率が低下してしまう事が報告されています。
その為、食事は3食バランス良く摂取し、栄養補助食品(サプリ等)を上手く取り入れていただき、無理のない食生活を送っていただけたらと思います。
監修医師紹介

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊
医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。