幸町IVFクリニック

培養室

卵子の質の見分け方!

2025.07.15

こんにちは!培養室の田幡です。

最近どんどん暑くなっていますが、体調はいかがですか??

 

私は少し前に長瀞で川遊びをして夏を感じてきたところです♪

水切りという石を川に投げて水面を跳ねさせる遊びに奮闘していたのですが、

なんと!!4回も飛ばすことができました!!最高記録です!(`・∀・´)

(ギネス記録は88回だとか…(;・∀・))

オタマジャクシやらカニやら自然と触れ合えてとっても癒された1日でしたε-(´∀`*)

 

 

 

 

さて、今回は受精前の卵子の質について少しお話してみたいと思います!

胚移植前や胚凍結時の胚盤胞なった段階の様子は、印象に残りやすいですが、

採卵したばかりの未受精の卵子の質について細かく知っている人は少ないかもしれません。

 

 

さっそくですが、体外受精における「良い卵子」には、

核の成熟と質の高い細胞質が最も大事です!!

 

 

まずは、核の成熟から!

 

卵胞内の未成熟卵(GV期卵)は、排卵のシグナルを受けると

染色体を包んでいた核膜は消え、紡錘体というものを形成します。

そこでは染色体の減数分裂が行われ、第一減数分裂中期(MⅠ期)→後期(AⅠ期)→終期(TⅠ期)→第二減数分裂中期(MⅡ期)と段階分けされます。

この中のMⅡ期と呼ばれるのが精子と受精できる段階で、

核が成熟したと判断される状態です。

MⅡ期になると同時に、第一極体とよばれる小さな丸い細胞質が放出されます。

 

第一極体は顕微鏡で観察可能ですが、

減数分裂は生きた卵子のまま観察するのはとても難しいです。

紡錘体の形であれば特殊な機械で観察できるので、

大きさや濃さなどから大体の核の成熟度を判断します。

昔は、第一極体だけで「成熟」を判断していた時代もあるそうですが、

今では研究が進み、紡錘体の観察も受精のタイミングにはとても重要だといわれています!!

 

この成熟度を観察するための紡錘体可視化システムのお話は、

他のブログで紹介しているのでぜひご覧ください!

→→→「紡錘体可視化システムを導入しています!」

当院のHPにも紡錘体の写真付きの説明があるのでそちらもぜひ見てほしいです!

→→→ここをクリック!

 

 

 

次に、細胞質のお話です!

 

細胞質には、良好なミトコンドリア機能や精子侵入時に反応できる準備、

受精後に活性化できる能力などが必要になってきます。

 

これらが揃った良好な細胞質というのは残念ながら顕微鏡で判断するのは難しいです。

その反面、細胞質の働きが上手くいかなかった時に現れる異常形態は顕微鏡で容易に観察できます。

今回はその中でもよくみられる4つを紹介しますね。

 

・滑面小胞体凝集塊(sERC)

  名前の通り滑面小胞体が凝集したもので、主にMⅡ期の卵子で観察されます。空胞に似た円状の見た目ですが、半透明かつ不明瞭で中身が異なります。

 受精後に細胞分裂を失敗する頻度が高いとされていますが、出産例も多くあります。

 

・refractile body

  主に過酸化脂質でできており、不溶性の不均一な重合体です。見た目は黒っぽい小さなつぶの様なもので、5µm以上のサイズでは妊娠率が低下するという報告もあります。

 

・空胞

  名前は「空胞」ですが、中身は空気ではなく液体です。大小はさまざまですが、sERCよりも円の淵がはっきりとし発見しやすいです。胚発生の途中でも出現することがありますが、数が少なく小さいもの(元の細胞の体積を減少させない程度)は胚発生に基本的には影響しません。大きな空胞があっても出産した例もあります。

 

・CLCG

  細胞質の中心部分から広がった影のように見え、がさついた印象があります。細胞質の未熟性が原因だと考えられていて、多くなると着床率や染色体異常にまで影響するとも報告されています。患者さんによって繰り返し出現することもあり、卵巣周囲の血流や卵胞液の組成に原因があるのではないか、という研究も進められています。

 

 

これらの異常形態の原因は不明な部分が多いですが、顕著にみられる場合や出現のタイミングによっては胚発育に影響を及ぼすという報告もあります。

ただ、妊娠率などに対する影響は結論付けられてはいません。

異常が観察されていても胚の発育とともに所見が良くなり、

出産に至った例も多くありますので不安にならないでくださいね!

 

 

 

とっても小さな卵子ですが、「良い卵子」になるには上記以外にもさまざまな条件が必要になります。

患者さんの体調や薬剤の効き具合はもちろん、

正常な染色体や成長速度、質のいい透明帯、適切なエネルギー循環・・・などなど

 

 

ホルモン注射で卵胞を育ててはいますが、最終的な質は卵子自身やそれを支援する周りの細胞、つまりご自身の健康状態に依存してきます。

年齢が上がれば妊娠率が下がるのは、核と細胞質の質も低下していくからです。しかし、ミトコンドリア機能など抗酸化を意識した生活で改善できる部分もあります!!

卵子の質を上げて、着床まで到達するようになるには普段の生活が大事になってきます!

特にこれからの暑い日には、体調や食生活を意識してもらえたら嬉しいです♪

 

 

 

われわれも、“質”の高い卵子を目指した体外受精を行っておりますので、

一緒に頑張っていきましょう!

 

 

ご自身の卵子を直接見ることはできない分、

ブログなどから培養室での様子をお届けできたら嬉しいです!

 

 

今後もみなさんの気になる話題を探してお話ししていきたいと思います!

熱中症対策はしっかりして、卵子に負けじと元気に過ごしましょう♪

ではまた次回(^^)/~~~

 

監修医師紹介

院長 雀部 豊

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊

医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。

※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。

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