幸町IVFクリニック

培養室

一般不妊治療と生殖補助医療(ART)

2025.09.02

 こんにちは!今回のブログは、培養室の堀井が担当します!

先日、府中市が全国の暑さランキング1位になっていましたね!!

1位と言われても、何とも言えない、複雑な気持ちですが…(´;ω;`)

あと少しで涼しくなると信じて、一緒に暑い季節を乗り越えましょう…!!

 

さて、今回は「一般不妊治療と生殖補助医療(ART)」についてお話していきたいと思います!

不妊治療での保険診療が始まり、「一般不妊治療」と「生殖補助医療」という言葉を耳にする機会が増えてきたかと思います。

 しかし、実際にどんな治療をしているのかわからない方いらっしゃいませんか??

 

そんな方はぜひ今回のブログを覗いてみてください◎

 

不妊治療には、「一般不妊治療」と「生殖補助医療」の2種類あります。

 

一般不妊治療は、タイミング療法や人工授精など、身体的に負担が少ない治療で、生殖補助医療は、体外受精などの高度な技術を用いて行う治療です。

 

2つの治療の大きな違いは、「精子と卵子の受精が体の中、外のどちらで起きているのか」という点になります。

 

この違いがあることで、どちらにも違ったメリットがあります。

今回はその違いについて詳しくお話ししていきます!

 

まず、一般不妊治療についてです!

 

 一般不妊治療は、先ほどお話ししたようにタイミング療法と人工授精を含んだ治療になります。

 

タイミング療法は、血液検査や超音波検査で妊娠しやすい「排卵日」を予測し、その時期に合わせて、性交渉を行うように指導する方法です。

 

人工授精は、タイミング療法と同じように「排卵日」を予測し、その時期に合わせて、濃縮した精子を子宮へ注入する方法です。

 

どちらも受精自体は体の中起きているので、自然妊娠と変わりません。

 

そのため、人間の手を介することは少なく、身体に負担がかかりにくいというメリットがあります。

 

ただ、一般不妊治療は、受精や発育の様子など、体の中のことは直接観察できないため、妊娠に至らなかった場合は、何が原因だったのかわかりづらくなってしまいます。

 

 また、一般不妊治療は回数をこなしても、妊娠する確率は上がらないというデメリットがあります。

 

このグラフは、日本産婦人科学会が出している人工授精の年齢別累積妊娠率です。累積妊娠率とは、治療を重ねることで、最終的に妊娠できる割合のことを指します。

 

 

 

3~4回目までは、どの年代でも治療の回数が増える毎に、累積妊娠率は高くなっていますが、5回目以降は横ばいとなり、妊娠する人が増えていません。

 

 つまり、不妊の原因が人工授精で克服できる人の場合は、3~4回までに妊娠が成立しますが、その間に妊娠しない人の場合は、高度な治療が必要な不妊の原因が隠れているかもしれません。

 

そのため、当院では人工授精を3~4回行って妊娠に至らなかったら、生殖補助医療へステップアップすることをおすすめしています。

 

 次に生殖補助医療についてです!

 

生殖補助医療は、卵子を回収し、体の外で精子と卵子を受精させ、育ててから子宮へと戻す、という一連の流れで行う治療になります。

 

生殖補助医療を行うときは、1度に多くの卵子を育ててから体の外へ取り出して、作業します。

 

これにより、多くの卵子を育てる薬を使用したり、本来は体の中で育つ卵子を、体の外で育てるため、患者様や卵子の負担が多くなってしまいます。

 

しかし、体の外で作業をするからこそ、受精や、発育の過程を目で確認し、不妊の原因を探せるという大きなメリットがあります。

 

 

 また、先ほど人工授精の累積妊娠率のグラフを示しましたが、生殖補助医療の累積妊娠率は、人工授精のような横ばいではなく、回数を経るごとに上昇するのが特徴的です。

 

 胚移植を2、3回行っても妊娠できず、心が折れそうになることも多いと思いますが、生殖補助医療はできるだけ諦めず、継続することがとても大切です。

 

皆様の負担が少しでも軽くなるように、私も胚培養士として技術や新しい知識を身につけ、妊娠のお手伝いをさせていただきます!!一緒に頑張りましょう◎

 

 

 

 ここまで、一般不妊治療と生殖補助医療の違いについてお話ししましたが、2つの共通点もあります。

 

それは、どちらも年齢が上がるにつれて妊娠するのが難しくなるという点です。

 

一般不妊治療は、人工授精の累積妊娠率のグラフのように妊娠率は30代よりも、40代の方が低くなっています。

 

生殖補助医療の妊娠率もまた同じです。

 

 

こちらは、日本産婦人科学会が出している、2023年の生殖補助医療の妊娠率、生産率、流産率のグラフです。

 

 

 

このように、生殖補助医療の妊娠率は年齢を重ねる毎に低下します。

特に、30代後半からは一気に低下し、流産率が増加します。

 

このデータやその他のデータも踏まえて、生殖補助医療の保険診療では、女性が39歳以下の場合、胚移植の回数は6回まで、42歳以下の場合は3回までという回数制限が設けられています。

 

もし、35歳の女性が、保険診療内での不妊治療を検討していたけれど、先延ばしをして40歳を過ぎると、保険診療での胚移植の回数が3回までに減ってしまうと同時に、妊娠率が約50%から30%近くまで下がってしまいます。

 

 そのため、不妊治療を検討している方、特に保険診療での不妊治療を検討しつつも、先延ばしにしている方は、なるべくはやめに治療を始めることをおすすめしております!!

 

 

 当院では、一般不妊治療から生殖補助医療まで行っておりますので、治療をするか迷っている方はぜひ一度、お気軽にご相談ください!

 

 

監修医師紹介

院長 雀部 豊

幸町IVFクリニック 院長 雀部 豊

医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医
1989年東邦大学医学部卒業、1993年同大学院修了。
大学院時代は、生殖医学専門の教授に師事し、胚の着床前診断(現在の着床前遺伝学的検査PGT)の研究を行う。以降、生殖医学を専門に診療・研究を従事。2011年、東京都府中市に幸町IVFクリニックを開設、同クリニック院長。一般不妊治療から生殖補助医療、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)まで幅広く診療を行っている。

※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。

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